今回、いわの美術がお買取りしたお品物は鎌倉彫の丸盆で、博古堂の当主であった後藤斎宮の鎌倉彫です。
鎌倉彫とは現在の神奈川県鎌倉市で彫られている漆器の事で、博古堂は禅宗寺院の仏像の制作のために奈良からきた慶派の仏師達の末裔が当主であった後藤家によって「仏師後藤齋宮工場 鎌倉彫製作部」として始まりました。
江戸期まで鎌倉では多くの仏像制作が行われていましたが、明治政府の政策によって廃業を余儀なくされる家も多く、後藤家もその岐路に立たたされました。
しかし、それをどうにかしようと尽力したのが後藤斎宮と後藤運久でした。
仏像制作で培った技術を駆使して鎌倉彫という漆器を作り出し、鎌倉彫の堅牢さを世に知らしめるために「一百年間保証券」というものを当時2回発行し、合わせて2000枚発行したそうで、不具合があれば新品と交換するという内容だったそうです。
それほど自信を持って制作されていた博古堂の鎌倉彫は斎宮と運久が考案した使う事を考えた彫りの手法を大切にし、現代までその技が受け継がれています。
現当主は博古堂初の女性当主で、デザインを通して伝え継がれた博古堂のかたちを大切にした新しい時代に合った鎌倉彫を提案しています。
お買取りした後藤斎宮の鎌倉彫丸盆は、とても古い時代に作られた作品とは思えないほど、しっかりと漆が残っており、使用していたものでしたので、傷が少しございましたが、美術的価値や鎌倉彫の資料としての価値もございましたので、高い評価での買取となりました。