今回いわの美術がお買取りしたお品物は、三代徳田八十吉の花入です。
三代徳田八十吉は、ニ代 徳田八十吉の長男として生まれ、祖父には色絵九谷の名工であった初代 徳田八十吉を持ち、1997年には重要無形文化財「彩釉磁器」(人間国宝)にも認定されました。
三代徳田八十吉の作品は、釉薬で色彩を調整した鮮やかな群青色に強い個性があるとされています。
人間国宝に認定されてからは、メトロポリタン美術館、文化庁、国立博物館、国立近代美術館、大英博物館などで三代徳田八十吉の作品が収蔵されるなど、国内外で高く評価されています。また、古九谷の学術研究にも尽力したことでも知られます。
三代徳田八十吉は、一般的な九谷焼のような山水・人物・花鳥風月という絵柄ではなく、色の配色のみによって作品を仕上げることに大きな特徴があります。
また、三代徳田八十吉は約70色の色を使い分け、色のグラデーションのみで作品を仕上げる「彩釉」という技法を生み出しました。
さらに、三代徳田八十吉の特徴としては、1000℃前後と高音で焼成することもあげられます。焼成温度を高温にすることで、深い色味が出るのだそうです。
三代徳田八十吉の作品の形状はロクロ成形で、多種多様のものがあり、紺系の色釉を中心として絶妙に濃淡を使い分けた深みのある作品の数々を生み出しました。
今回買取させていただきました花入は、そんな三代徳田八十吉の個性が見事に反映された作品でした。
黄色・緑・青などをぼかし、幻想的な情感にあふれており、形もシャープな部分と丸みを帯びた部分の絶妙なバランスで、知的な雰囲気に満ちた作品でした。
花入の裏面には「九谷 正彦」という初名 正彦の銘があり、共箱にも自筆の箱書と三代徳田八十吉の証である落款がありました。
今回買取の三代徳田八十吉作の花入は、作品自体の状態も非常によく、高価買取にての対応となりました。
三代徳田八十吉は、その色彩、技術を日本だけでなく、全世界に発信し、海外でも多くの作品を残しています。
また、プロゴルファー石川遼選手のプロ初優勝のトロフィーに三代徳田八十吉の作品が用いられたことでも話題になりました。
三代徳田八十吉は「自分の上の世代の作風をまねしたくない。僕は僕の作品を作る」と、あえて絵から離れ、色と向き合った作家です。
そのガラス化した釉薬の中に色を閉じ込められた作品の数々は、永遠に輝き続けています。