今回、いわの美術がお買取したお品物は重香合で作者は上杉満樹です。
重香合は香道、茶道で使用する道具で三重になっているのが特徴です。
上段に香を包んだ香包、中段に銀葉をそれぞれ入れ、下段は香の焚きがらを入れるという仕組みになっています。
香道、茶道の各流派によって形状の違いはありますが、基本的にはこの構造のようです。
お買取した重香合の作者である上杉満樹は、明治時代に京都で誕生した漆器の工房「満樹工房」の当主が代々襲名している名前で、現在は3代目の上杉実が上杉満樹を名乗っています。
満樹工房は京都の東山区にある清水寺近くの木々に囲まれた若宮八幡宮の裏門前に位置しており、家族経営で茶道具を中心とした漆器制作を行ってきました。
本業は指物でしたが、現在では漆器における木地工程、塗工程、蒔絵工程ふくめて一貫生産を行っており、量産ではなく品質にこだわりを持って制作にあたっています。
その技術力の高さが評価され、古美術商や研究機関などからの漆器修復依頼も数多く、その多彩かつ丁寧な手仕事は専門家からも信頼されています。
そんな上杉満樹の重香合ですが、松ぼっくりをあしらい、杢目をいかした趣のある重香合に仕上がっており、使用感は多少ありましたが、目立ったような傷や汚れ、シミもなく共箱付で良い状態で買取らせて頂きました。