今回買取したお品物は酒器でラリックのデキャンタです。
ラリックとはアール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代をリードしてきた作家であり企業家です。
フリーランスのデザイナー、グラフィックアーティストからスタートし3年後にはパリのヴァンドーム広場にアトリエを構えるまでになりました。
主に高級アクセサリーをデザインしており有名な女優やカルティエなどの宝飾店にも作品を提供していました。
パリ万博出展後のラリックは色鮮やかな作風から白を基調としガラスの魅力を引き出すためにシンプルで透明感ある作風に変わりアール・ヌーヴォーの特徴である非対称性からシンメトリーへ変化していきました。
後に、コティ社から香水瓶の発注を機にガラス制作へと移行していきます。透明の美を追求していくとアール・デコ時代にはフランスを代表する国際的な工芸ガラスメーカーに成長しました。
特徴としては、光がガラスを透過する時の輝きと変化する表情の豊かさ、力強い造形が感じられます。
また、交通手段が発達しスピード時代が到来するとロールスロイスやジャガーなどの自動車のボンネットを飾るカーマスコットなど新たな装飾製品の可能性に着目し反射光では青、透過光ではオレンジに見えるオパルセント・ガラスを生み出します。
お写真の作品の特徴としては、透明と乳白色のグラデーションの美しい花と蝶をモチーフに作られた季節感を感じる素敵なお品物でした。
ラリック社の現在は血縁者による経営ではありませんが1920年頃から現在まで続く歴史ある会社です。