フルネームはウラジーミル・エヴグラフォーヴィチ・タトリンといい、ロシア領であったウクライナ出身の彫刻家で、画家、建築家、デザイナー、舞台美術家としての顔を持っており、ロシア・アヴァンギャルド(ロシア構成主義)というロシアの芸術運動の代表的な作家の一人に挙げられます。
しかし、ロシア・アヴァンギャルドの活動に加わりながらもカジミール・マレーヴィチと袂を分かち、最も構成主義を批判した作家としても知られています。
ウラジーミル・タトリンはロシア領であったウクライナのハリコフにある技師の家庭で生まれ、若い頃は水平としてエジプトやシリアなど各地を航海した経歴を持っており、この経験がのちに芸術家として大きな影響を与えました。
モスクワの絵画・彫刻・建築学校で基礎を学び、ロシア革命の後は芸術学校で教鞭をとっていました。
ウラジーミル・タトリンと言えば、「第三インターナショナル記念塔」がとても有名です。
これはパリのエッフェル塔に匹敵する高さの螺旋状の鉄塔で、その鉄塔の内部には1年に1回転する立方体、月に1回転するピラミッド、1日に1回転する円柱、そして1時間に1回転する半球という複雑な構造を持つ建築物として計画されたものでした。
もちろん、それぞれの部屋は会議室、インターナショナル組織、出版局や情報局といった実際に使用できるスペースとして構想されていました。
しかし、物資不足や様々な問題があったため、実現しませんでしたが、その素晴らしい構想は支持されており、現在は再現CGが作られています。
このように鉄やガラスという新しい素材の利用や大胆な形態、高度な技術を必要とする点などから自然のメカニズムと調和と改革の理念を感じるという事で、ロシア・アヴァギャルドの象徴的作品とされています。
晩年は「人間の本来の空の飛び方を思い出して欲しい」と鳥の飛び方を研究し、飛行技術の発展に役立てようと尽力していたそうです。