岐阜県出身の現代の志野を代表する作家です。
美濃陶芸展という岐阜県多治見市、可児市、土岐市、瑞波市などで窯業を営む実力のある陶芸家(美濃陶芸協会所属の陶芸家)が出品する陶芸展があり、この陶芸展の「美濃陶芸大賞」「加藤幸兵衛賞」「庄六賞」は毎年1点ずつ選ばれるもので、美濃の陶芸家にとっては、大変重要な賞となっています。
この3つの賞を次々に受賞したのは林正太郎が初めてで、その事からも実力ある作家である事が分かります。
また、土岐市指定重要無形文化財保持者、岐阜県重要無形文化財保持者の認定も受けており、高い人気を誇る志野焼の作家として知られています。
そんな林正太郎ですが、窯元の家に生まれながら焼物にはまったく興味を示さず、名古屋でサラリーマンとして生活を送っていました。
しかし、毎日同じ事の繰り返しでつまらない日常に飽き足らず、実家に戻り、兄・孝太郎に師事して焼物を始める事にしました。
兄・孝太郎は美濃の有望な若手作家として注目を浴びており、日本工芸会正会員、美濃陶芸協会理事をつとめた人気作家です。
独立してからはガス窯で鉄釉などの天目や黄瀬戸などの様々な作品を制作していましたが、個展を開催した際、「美濃で作るなら志野が一番」という来場者の言葉で志野に打ち込む事を決意し、その後は志野一本で制作を行うようになります。
美濃焼の伝統的な原材料と技法を研究し、現代の原材料や燃料に工夫を重ね、力強い造形と長石釉の柔らかな膚合いと変化に富んだ志野を生み出し、単に桃山時代の志野の再現に留らず、常に新しいものを求め、創造性に溢れる志野を作り続けています。