19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したガラス工芸家で、兄・オーギュストと弟・アントンによってガラス工房が設立された事で「ドーム兄弟」と呼ばれています。
二人の父親はガラス工場の経営者で、ドーム兄弟は父の仕事を手伝うようになります。
その後、独立して自分たちの工房を持ち、当初は日常的なガラス食器を中心に制作を行っており、アール・ヌーヴォーの巨匠エミール・ガレを手本としてガラス工芸品も手掛け、工房の経営は順調でした。
しかし、このままエミール・ガレの模倣を続けていてもエミール・ガレを越える事はできないと感じたドーム兄弟は、まったく新しいガラス工芸品を生み出そうと研究を重ねます。
ガラス素地に絵模様を描いて、さらにガラスをかぶせる技術で模様に奥行きが出る「アンテルカレール」、粉末状にした色ガラスをまぶして再加熱し、素地になじませガラスの肌に多くの色を発色させる「ヴィトリフィカシオン」、布地のような不思議質感のあるガラス「パート・ド・ヴェール」などの技術を用いた作品は、パリの万国博覧会で大賞や金賞を受賞するなど、多くの人々に愛されるガラス工芸品として認識されるようになりました。
また、「アンテルカレール」はドーム兄弟が初めて考案したものでしたので、特許を取得しています。
その後、工房の更なる発展をめざし、数多くの有名な芸術家をデザイン・制作・装飾の専門家として迎え、美術的価値を高めていきました。
また、工房の職人たちには自分たちが開発した技術を惜しみなく教え、その技術と心意気は現在でもしっかりと受け継がれています。