今回は掛軸をお買取りさせて頂きました。
作者の小原古邨は明治から昭和にかけて活躍された浮世絵、版画師です。
1890年代、花鳥画を得意としていた鈴木華邨に師事し、日本画を習得すると、アーネスト・フェノロサの指導のもと共進会等に出品も行いました。
本名は小原又雄といい、古邨、祥邨、豊邨と号しました。
こちらの掛軸は祥邨の号が使われています。
まず明治期に古邨の号で木版画の花鳥画を発表し、大正に祥邨と改号して肉筆画を描き、以降豊邨と再び改号し花鳥画や動物画の木版下絵等を発表しました。
作品には木版画の物が多いなか、こちらの掛軸は絹本に肉筆で描かれたものでした。
作品は写生に基づいた写実的なもので、落ち着いた色合いと濃淡を使った繊細な筆遣いがうかがえます。
左上に描かれた月が前面の枝と花を照らし、目映い白の花と、影になり仄暗さのある花が混在することで、春の夜が表現されています。