灌仏会
灌仏会(かんぶつえ)は仏教において釈迦(しゃか)生誕を祝う大切な日で日本では毎年4月8日や5月8日に各宗派の寺院で法要が行われます。
日本の灌仏会の法要は花御堂(はなみどう)という様々な花で飾ったお堂の中に灌仏桶を置いてちいさな誕生仏を中心に丁寧に安置し、誕生仏に柄杓で甘茶(甜茶を意味する)をかけて祝います。このお祝いは「釈迦が誕生した際、産湯に用いるための清浄の水が九つの竜によって天上から注がれた」という伝説が由来です。誕生仏のポーズは釈迦が生まれてすぐの説話の中で、東西南北の四方にそれぞれ七歩あゆみ、右手で天を指し左手で地を指して「天上天下、唯我独尊」と唱えた際の姿をかたどっています。
灌仏会を描いた絵でしばしば誕生仏と共に登場する華やかな装身具をまとった白い象は、釈迦が産まれる前、釈迦の母・マーヤ―が見た夢のなかに現れた六本の白い牙を持つ白象であるといわれています。灌仏会の法要の際には、大多数の釈迦を本尊とする寺院で甘茶が振る舞われ、甜茶で習字をすれば上達するという願掛けや害虫よけのおまじないをして過ごします。
灌仏会、花祭りと聞くとお子様が子どもの頃を思い出す方も多いかもしれません。お寺が経営する幼稚園では子供たちが毎年4~5月に狩衣、神楽の衣裳をまとい「お稚児さん」(おちごさん)「稚児行列」(ちごぎょうれつ)と呼ばれる修行の一種にとりくみます。年中行事としてかならず甘茶を頂くという、課外学級として親しまれています。
灌仏会の呼び名と「花祭」
「花祭」(はなまつり)という呼び名は、明治時代にグレゴリオ暦と呼ばれる1年を365日とする暦が導入された後になづけられました。
浄土真宗の僧侶であり、逓信(郵便や通信)・鉄道従事者への仏教布教に尽力した安藤嶺丸が大正五年ごろに始めた釈迦を祝う祭り行事でした。関東地方より西で4月8日の頃はちょうど桜が咲きます。
愛知県三河市で行われる「花祭(霜月神楽)」(イメージ右)という、三日三晩を通してお酒を入れて踊るお祭りや、里山で山開きや農作業が始まる時期にひらかれる田楽、山の神を祝う祭りである花立(はなだて)、卯月八日(うづきようか)のにぎやかさに、仏教の灌仏会が「習合」して「花祭」となったという説もあるようです。
他に灌仏会の呼び名としては 降誕会(ごうたんえ)、仏生会(ぶっしょうえ)、浴仏会(よくぶつえ)、龍華会(りゅうげえ)、花会式(はなえしき)といった多くの別名があり、釈迦の誕生日の伝説と仏への感謝を表わしています。