普段使いの食器から高級な工芸品まで、幅広い種類の品物に使われている漆器。英語では「japan」と呼ばれているほど、日本の伝統工芸品として世界的に認識されています。おしゃれな漆器を1つ置くだけで、食卓が華やぐことでしょう。
今回は、漆器の主な特徴やお手入れ方法、より長く愛用できるための保管方法をご紹介します。漆器を正しく扱うために役立つのはもちろん、漆器の売却を考えている方も、ぜひご参照ください。
漆器は、漆の木から抽出された樹液を木板や金属、紙などに塗って作られた工芸品です(現在では、漆ではなく合成塗料やカシューナッツの樹液を塗料に用いた製品もあります)。日常品としてはもちろん、鑑賞用の美術品として楽しむ方も多くいます。
漆器の長所は、軽くて割れにくいこと。そのため、お手入れ時はさほど神経質になる必要がありません。また、化学変化が起きにくく、酸性とアルカリ性のどちらにも強いという特徴があります。食器として使用する際は、酸の強いお酢を使った料理でも安心して盛りつけることが可能。断熱性にも優れ、冷たいものと温かいもののどちらを盛りつけても食べ物の温度が変化しにくいため、ある程度時間が経ってもおいしさを損なうことなく味わえます。
漆器は日常のあらゆる場面で広く使えることから、日本だけでなく、東南アジアなど世界各国で生産されています。
漆器の良さは、割れにくく傷がつきにくいことですが、それでも洗う際には丁寧に扱いたいもの。あまり強くこすると表面を傷つけてしまいます。食器として使い終わって洗うときは、柔らかい布とスポンジで優しくこすって汚れを落とし、力を入れすぎないようにしましょう。漆器は種類によって「薄めた台所用中性洗剤なら使用可能」と書いてある製品がありますが、洗剤の成分が染み込んで変質する場合があるため、できるだけ洗剤は使わない方が無難です。比較的汚れが落ちやすい素材なので、洗う際に洗剤を使わなくても、ぬるま湯洗いで十分きれいになります。
漆器に食べ物を入れて保存するとき、冷蔵庫であれば入れても問題はありませんが、冷凍庫に長時間入れると変色やひび割れの原因になります。また、急激な温度変化に弱いため、電子レンジも使用できません。注意しましょう。
漆器を保管する上で注意したいのは、極度の乾燥と直射日光を避けることです。湿気に弱いため、洗い終わった後は水分をよく拭き取ってから適度に乾燥させ、風通しの良い食器棚などに置いておきましょう。
直射日光を避けるためには、箱に収納する保管方法が最善です。ただし、長期間箱に入れたままにしておくと漆器特有の漆の匂いがこびりついてしまい、食事の際に少し気になるかもしれません。
長期間しまっておいた漆器や購入した直後の漆器は、いったん箱から出し、直射日光を避けた風通しの良い場所にしばらくさらしておきましょう。漆の匂いを早く抜くことができます。
狭い場所に重ねて保管すると、漆器同士がこすれ合って傷やひび割れの原因に。重ねるときは漆器の間に薄くて柔らかい布を挟むと良いでしょう。
食器棚の湿度を適度に保つようにしておくと、漆器の乾燥を防ぐことができます。なお、スペースに余裕がない場所へ効率的に保管するには、入れ子構造の漆器がおすすめです。
軽い・割れにくい・化学反応が起きにくい・断熱性に優れている、と基本的には扱いやすい漆器。洗う際には、ぬるま湯を使って柔らかい布とスポンジで優しくこするように汚れを落とします。そして、適度に湿度が保たれた日差しが当たらない場所で正しく保管すれば、いつまでも美しく長く愛用できます。
漆器のある食卓は、華やかで上品な雰囲気になります。ぜひ、特別な日はもちろん、日常的にも使って、日本の伝統工芸品の豊かさを堪能しましょう。
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