日本の伝統工芸品として海外でも人気が高い漆器。漆器=漆(うるし)を塗料に使った器、というのが一般的な認識ですが、実は漆以外を塗料として使っている「漆器」もあります。また、漆器のベースである器の素地(そじ)も複数の種類があり、それぞれの特長を生かした製品が数多く存在しています。
今回は「漆器」と呼ばれている製品の種類および特徴を把握し、価値のある漆器を見分けるための知識を身につけましょう。
漆器は、塗料と素地の2つの要素から成り立っています。
塗料としてよく知られているのはもちろん漆ですが、実はそれ以外に広く流通しているのが、合成塗料やカシューナッツの樹液などです。これらを使った漆器製品は、漆塗料100%のものよりも安価で購入できます。
また、素地も高級漆器に使われる天然木材から安価で量産可能な合成樹脂まで、さまざまな種類があります。日本ではこれらも含めて「漆器」と呼ばれており、目利きの方でない限り、店頭で見ただけでは天然木材と合成樹脂の漆器は見分けが難しいでしょう。
素地を確かめたいときは、器の表面を指先で軽くはじいてみましょう。合成樹脂の製品は天然木材の製品に比べて硬い音がするため、あまり使い慣れていない方でも比較的簡単に区別できます。しかし、最近は天然木に近い合成樹脂も作られているようです。店頭で製品を判別したい場合は、お店のスタッフに直接聞いてみると良いでしょう。
取り扱いについては、天然木材の製品の方がデリケートなため、いくつか注意事項があります。
●直火・電子レンジ・オーブンなどでは使用しないこと
●極度の乾燥や湿気、急激な温度変化に弱いため、以下のことは避けること
沸騰したての非常に高温なものを入れる、冷蔵庫に放置、水分を入れたまま放置
器に塗られた塗料も、漆器の品質を決める大切な要素です。
漆器の塗料は前述のとおり、漆の樹液以外にもあります。安価な製品によく使われるのは、生産コストが低いカシューナッツの樹液や合成塗料などです。
ここ数年は特に塗料の生産技術が向上し、天然の漆塗料以外のものも、漆製品とほとんど遜色のない色艶を実現できるようになりました。店頭では区別を容易にするため、合成塗料の漆器には「合成塗装」、カシューナッツの樹脂塗料製品には「カシュー塗装」と、ラベルで明記されています。電子レンジの使用条件など、日常での取り扱い方法は塗料の種類によって異なるため、購入前によく確認しておきましょう。
買取で高値が期待できる漆器の条件は、第一に素地に天然木材(ケヤキ・水目桜・栃・桂など)が使われ、塗料に天然の漆を使うなど、「すべて天然素材であること」です。これに加え、「日本三大漆器」と呼ばれる山中漆器・会津漆器・紀州漆器の製品であれば、よりいっそうの高価買取が期待できるでしょう。
また、絵画などと同じく有名作家の作品であれば価値はぐんと上がり、多くの骨董品取扱店で高価買取されます。さらに、最近では中国産漆器の品質が向上し、日本国内でも高い相場で取引されています。
漆器は日頃の保存状態によっては品質が悪化し、買取金額が下がる可能性があります。高価買取を目指すのであれば、普段から丁寧に取り扱いましょう。乾燥や湿気、急激な温度変化に注意し、優しく丁寧に洗って保管してください。
漆器の製品価値を決めるのは、天然木材や漆塗料など使われている素材と、漆器のブランド、作家のネームバリュー、そして正しい取り扱いによるきちんとした保存状態です。天然木材の素地と天然漆塗料が使われている製品は「純製の漆器」と呼ばれ、リサイクル店や骨董品店でも安定した高値がつきます。
ただ、安価な漆器が悪い、ということではありません。最近の安価な漆器は見た目のクオリティが高いので、使うシチュエーションによって高価な製品と安価な製品を使い分けると良いでしょう。その場にふさわしい漆器を選び使って、漆器ならではの美しさや質感をお楽しみください。
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