朝の茶事
朝の茶事は茶事七式の茶事の一種で、現代においては五月末~八月の夏場の朝に開かれます。
朝茶事ともいい、現代では夏季の風炉の時期に限られていますが、利休の時代は一日二食で有ったため、年中、極月(12月)まで朝茶事の記録が残っており、午前中の茶事全般をさしました。
朝茶事に参席された方のおはなしによると朝の涼しく薄暗い時間に、日常よりも感覚を研ぎ澄ませながら会席を頂くと、ついお酒が進んでしまうといいます。現代では朝からお酒を呑むのはお正月や休暇の時期に限られる風潮ですが、利休の時代の茶人たちは、修練をつみつつ平素もさかづきを交わし、意気揚々と過ごしていたのかもしれません。
朝の茶事 流れ
- 現在では午前6時から7時までの席入りとして案内します。日中が酷暑になるということで三露のあとに下露といって露地には入念な打ち水を施します。
- 客の到着と同時に白湯を出し、腰掛へと案内します。
- 初炭先となるため、釜の中の水の温度は水ばなれ(温められて水が冷たくなくなる程度)ほどとしておき、炭も前夜に洗って芯に湿り気の残ったものを用います。これは火付けを遅くして長く保つためであり、客が席へ入ると初炭を直します。
- 釜を引き付けたところで風炉の中の拝見を請います。亭主は釜にたっぷりの水を注ぎ、沸くのを遅くします。
- 炭が終わると会席となります。八寸の盆は四角が多いものですが、涼を呼ぶためにこの席では木地の丸折敷を水でぬらすなども良いといいます。向付やそのほかに生の魚を用いないことは昔からのことで、今もそれを守るとよいとされています。焼き物(焼いた魚や肉)も省いてあっさりとした献立にします。膳を引き、菓子を出して中立を請います。
- 後座は床に花、水指も涼しさをよぶよう木地の釣瓶かしっかりと湿らせた無地の陶器がよいとされます。現代では「ギヤマン」「義山」といってガラスの道具も適したものが作られています。
- 濃茶が終わると朝茶は亭主の方から挨拶をして、続けてお薄を点てます。時間は少なくとも三時間、通常の茶事より短縮して8時半から9時には終わるようにし、亭主も客もササッと立際を鮮やかに動くようにということです。
- 人数は5人程度がちょうどよく、小間で行います。
朝の茶事 今日
現在では案内は午前5時ごろとし、3時間程度で終わるというのが通常です。寄付けで香前の代わりに暑気払いとして梅酒を出す場合もあります。会席では向付に生魚を用いないため、イナダなど干物を用いることが多いようです。焼き物も生ものを省き、一夜干しや風干しなどにします。朝食となりますので、汁物、香ものを十分に用意します。花は朝顔、ヒルガオ、むくげなどを多く用い、その場合は初座に花の開いていく様子を賞味するために、初座に花とし、後座に掛物としても良いといいます。