暁の茶事
暁の茶事は、年の暮れ12月から二月にかけての極寒の時期の朝五時ごろから始まる茶事のことを指し「残灯の茶事」「残月の茶事」「夜込み」とも呼ばれます。
日の出の景色の美しさや、極寒の朝の冷気を感じて気を引き締めることが醍醐味です。
かつては暁といわず「朝の茶事」といい、まだ夜が明けないうちから席入りをしていました。
現代では夜明け前二時間前後に行うことが多くなったため、日の出の二時間前後に行う茶事を「暁の茶事」と呼ぶようになっています。
暁の茶事 流れ
- 茶事に招待された客人は前日に亭主の家を訪れ、事前の挨拶をしておきます。
- 亭主側は夜を込めて(夜の明けないうちから)準備をします。
- 茶室の露地の打ち水は前夜遅くにたっぷりとしておき、そのまま朝を迎えます。
- 灯火は本席と待合ともに行灯を灯します。茶室は小間の本席で暁の催しにふさわしく東方に窓のある席が良いとされます。
- 夜咄に似ていますが暁の茶事の会席で生の魚は使わず、前茶があり、料理の献立は暖かいものが中心で客人がそろうと直ちに玉子酒や栗ぜんざい等、体を温める料理が供されます。それをお茶うけに前茶として薄茶が始まります。
- 初炭:前日の夜から火をつけ続けていた炉の中に炭を1、2個足して松風のふもとでゆっくりと点てます。前夜からの残り火に底取を持ち出して底上げをして下火を残し炭を継ぎます。
- 暁の茶事では初炭のあと、釜をいったん水屋に持ち帰り、湯を半分ほど流して、井華水(せいかすい)というその日の寅の刻に井戸から汲んだ水をあふれるほど満たして2~3杓分を柄杓でかきだし、同じ釜を再び炉に据えるという「濡釜」(ぬれかま)が行われます。名のとおり濡れた釜ですので、竹か板の釜敷を用います。
- 会席の際には、棒を用いて小間天井の突き上げ窓を開け、暁の曙の光を取り入れるという習わしがあります。夜が明けてくる外の気配によって、亭主の判断で行灯が下げられます。
- 会席とご相伴が終わった後に客人は中立といい亭主が席を改める準備を待ちます。
- 後半の座では床に花が飾られ、濃茶、後炭、薄茶と続きますが、中立までは主客ともにゆったりと進行し、後座に入った後はすみやかに動くよう心得ておく必要があります。
暁の茶事は、亭主にも客人にも熟練した茶人でなくては風情もでにくく成しがたいと言われていますが、普段の稽古をよく積んでからぜひ経験してみたいお茶事の一つですね。