不時の茶事【2016年買取・新着情報】

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新着情報

不時の茶事

2016.1.7

不時の茶事

不時の茶事とは前もって予定を立てた来客ではない臨時の客をもてなす際の茶事のため「臨時の茶事」とも呼ばれます。

その時々により急にお客様が来るということでサッと対応できる機微さを養うことができるでしょう。定まった手順はなく、亭主の働きが主な見せ所となります。暮らしの中でとっさの来客に戸惑い、次からは急な来客でもサッともてなしをしたいといった状況に、茶の湯の教えは役立てられるように出来ています。いわの美術ではお急ぎのお客様にも対応しておりますので、もしお客様が査定をお急ぎの場合にはその旨をお教えくださいますようお願いします。


南方録 不時の茶事 

南方録には、急ぎつつも良きおもてなしのための手はずの一例が記されています。

不時の茶事はお客様に失礼がなく、亭主側も良いと思えれば道具の取り合わせやお茶請けの選び方に守らねばならない決まりはないため、上手くこなすことができるようになることで普段とは雰囲気を変えて自由に楽しむことができそうな茶事ですね。

南方録 現代語訳

「朝、昼、夜と三時以外の時間を不時(ふじ)といい、朝飯後も家の門の前を通りがかりに入ってきて一服を所望されることがある。これは急な接客で、露地の手水鉢の水を入れ替えるまでに早く案内するべきである。露地には水をたっぷりと打つように。棚にあるままの道具で(客を)呼びいれ、炭を加えて濡れ窯に改め、あぶった昆布や栗の水煮のたぐいを茶請けに出し、濃茶になる抹茶を引いた物があり合わせればそれを濃茶にしよう、無ければ薄茶をそのまま点てて良いであろう。

炭の時に棚の棗にある茶は取り入れるべし(使うと良い)御座の掛物は巻いて花を客に所望するべし、また初座の花であればそのまま取り入れて、秘蔵の掛物や普段とは外れた題材の掛物を飾っても良い。このようなことは自らの判断により、必須ということではない。

急な接客のとき、煮しめの残りをお茶請けにすると自分の食事の残りのようで悪い。利休が壮年のころ、奈良の住人の宗泉という者が不意に不時に一服を所望したときに煮物の茶請けを出したことを後悔したことをたびたび門弟子に話したからという。二度として1日~2日前にでも朝飯後の何時比べにお茶を貰いたいと申しいれる者、または亭主よりも不時に(急に)一服を約諾した(約束をとりつけてしまう) ならば、露地数寄屋の準備は普段の会と同じようにすることだ。少宛の心持(謝礼を要するかどうか)は亭主の働きかけに寄るべきだ。

もちろん煮染め(にしめ)のたぐい、または吸い物で一献(酒を一杯)、何においても茶菓子の策(茶菓子をどうするか決めておくこと)はもてなす心の次に必要な事だ。不時の会はどのようにでも秘蔵の道具・さかづきを一色も二色も(雰囲気を変えて)出し、所作を真剣にし、心は草(気張りすぎない)のがよい。」


南方録 原文

朝昼夜三時の外を不時と云、朝飯後にても門前を通掛に云入て、一服と所望の事あり、是急接也、露地は手水鉢の水改むるまでにて、早く案内をすべし、中立前露地内外雪隠等、水たふたふと打べし、床台目共に薄茶の棗抔、棚にありの儘にて呼入、炭加へて濡釜に改、あぶり昆布水栗の類茶請に出し、引合たる濃茶あらば濃茶にすべし、さなくば薄茶を真にはたらきてよし、炭の時棚の棗茶 は取入べし、後座掛物巻て客へ花所望すべし、又は初座花ならば取入て、秘蔵掛物抔外題をかざりてもよし、ケ様の事時宜に寄べし、必と云にはあらず、急接の 時、にしめの類茶請に出す事ひが事也、我食事の残の様にて悪し、利休壮年、奈良住人宗泉と云者、不図不時に一服所望しけるに、煮染の茶請出され、後悔のよし、度々門弟子に語られしとかや、又は前日前々日にても、朝飯後何時比御茶被下候へと申入、又は主よりも不時に一服と約諾したるは、露地数奇屋のもうけ常の会同前也、少宛の心持は、主の作用分に寄べし、勿論煮染の類、又は吸物にて一献、何にても茶菓子心次第也、不時の会いかにも秘蔵の道具抔、一色も二色も出し、所作真にすべし、心は草がよし


三斎伝 不時の茶事 

細川三斎による『三斎伝』にも不時の茶事について記されています。準備に囚われず歓迎の気持ちを表すことが前半に、後半では利休流の刻限の区切りを教えながら、不時に茶を呑みに行けるほど仲のよい間柄であっても「親しき中にも礼儀あり」を守るようにと説いている原文から、茶人たちの日常の情景が垣間見えます。


三斎伝 現代語訳

「不時の来客があった際には、どのような様子の者であっても苦にせず、路地の打ち水にもかまわずに客を迎えに出るのが吉だ。ただし客は手水を使うゆえ、手水は入れてから出るべきだ。釜を掛け置かずに火を持ち出し、墨を置き、釜を掛けながら露地に水を打たせて、花杯を客に所望しよう。花入れに花があればそれを使って籠に花を入れて見てもらっても良いであろう。客は入っていなくても主人の様子によって入ると良いだろう。不時の時は亭主の所作多ければ(忙しければ)タイミングに囚われない方がよい。花を生けるのも亭主側のしやすい生け方でよい。そのうち湯が沸いたなら、先に薄で点てる(中略)前の火弱くなってきたならば中座してまた炭をおくべし。火加減は保たせるべし。座敷に釜掛のある時に不時の来客があった場合は、客座敷に入ってもらい、ただちに炭斗を持ち出して釜を勝手に用いれ、湯をあけて(いったん流して)釜を変えるという仕方もありだろう。これも客と亭主に寄る事だ。
『和泉草』(文献)には、「朝昼晩の三度の会に似ないように諸々のことを成し遂げるのが肝要だ。料理の置き合わせの上でもその心得をあるべし、もちろん茶道前もである」と書かれている。
『茶譜』(文献)には、「利休流の不時の茶の湯というのは、約束なしに茶を呑みに尋ねて来る行(御一行さま)をいい、彼らが亭主のところへ行く時刻、例えば七つ半時に行って未明に帰り、または朝飯後に行って吉(よい)飯後は普段の食事時をみて菓子を出すくらいの時刻を考えて行き座敷に入る位の時間に行って吉、 不時に茶を呑みによそへ尋ねいくども、以上の時刻以外は無用である。夕飯後は晩の八つ前より八つ過ぎの間である、誰であってもその時間は飯後の茶事になる。また晩の七つ過ぎには、灯篭を見て帰るというのが吉だ。 利休流は晩の七つ半より、石灯籠に灯りをともす習わしがあるので七つ半よりは夜の茶事となる。亭主もその時刻を考えて、常日頃の路地も座中も心得て嗜んでおくものだ。これを知らないものは、自分の機嫌次第で何時のわきまえもなく尋ねて行き、案内もされないゆえに誤ちをするのだ」と書かれている。

三斎伝 原文

不時の客来候はヾ先如何様の体にても不苦、露地の水打にも不構、客の迎に出るが吉、但手水は入させて出べし、客手水遣ふ故也、釜を掛置不申ば火を持出、炭を置、釜を掛申中に、露地に水打たせ、花抔客に所望致べし、花被入候はヾ其中に身拵して罷花可見、客は不入も能、主客時の様子に依べし、 不時は亭主の所作多ければ、余り時宜に不及、花を入るも、亭主方の仕能き物なり、其中に湯沸候はば、先薄く可参哉と尋望みの由に候はヾ薄く点べし、其間に 懐石にても茶菓子にても急き出すべし、尤俄に出来不申ものは、仮令有合候共不可出、茶抔も座敷へ聞え候所にて曳きたるが能、前の火弱く成候はヾ中立前又炭 置べし、火加減能は中立させべし、座敷に釜掛ある時、不時の客来候はヾ、客座敷へ入られ、則炭斗持出し炭置、釜を勝手へ持入、湯を明て水を替釜を掛る仕方 有、是も客亭主に依事なり」

『和泉草』に「朝昼晩三度の会に似ぬ様に、諸事仕成事肝要也、料理置合等の上も其心得有べし、茶道前勿論なり」

『茶譜』に 「利休流不時の茶湯と云は、兼て約束無之茶を呑に尋行を云也、其行く時刻、或は朝の七つ半時に行て、茶を呑未明に帰り、又は朝飯後に行て吉、飯後は常の飯過て菓子を出す程の時刻を考、座敷に入程に行て吉、或は又晩の七つ過時分に行も吉。不時に茶を呑みに他所へ尋ね行共、右の時刻の外は無用、朝飯後は六つ半 より五つ迄の間也、夕飯後は晩の八つ前より八つ過迄の間也、何方にても、其時分は飯後なるべし、又晩の七つ過に尋行は、夜分の心也、灯を見て帰る程なる 吉、利休流は晩の七つ半より、石灯籠に灯を灯す事習也、依之七つ半よりは夜の茶湯也、亭主も其時刻々々を考へて、常の路地も座中も其心得して嗜むもの也、 之れを不知者は、我が機嫌次第何時の差別無之尋行事不案内故の誤也」

いわの美術ではこのような茶法書の和綴じ本の古書を買取る場合があります。

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