陶磁器に絵を付ける絵付けには、主に下絵と上絵があります。
陶磁器などのやきものは、土から形を作り、乾燥させてから素焼きをし、釉薬を掛けて本焼をしますが、下絵付と上絵付の違いは、本焼きの前にする絵付けか、後にするかという点です。
素焼きの後、釉薬を掛けて本焼(焼成)する前に色や絵、文様を描くのが下絵付です。下絵付では、素焼きの生地の表面が荒いため、細かい繊細な絵を描くことが難しく、また、高温の本焼きに耐えられる顔料が必要でその種類は、あまり多くはありません。したがって、下絵付では、色鮮やかな絵を描くことはできません。
磁器の下絵の代表的なものが「染付」です。染付は白地に藍の濃淡で描かれた絵や模様の美しさで知られます。
酸化コバルトを主成分とした「呉須」で下絵を描き、透明釉を掛けて焼成しますが、呉須の質や窯の中での炎の具合で微妙な色合いが変化します。
陶器の下絵の代表的なものが、「絵唐津」です。
鬼板ともいわれる鉄砂で下絵を描き、長石釉や藁灰釉などを掛けて本焼きしたのが鉄絵です。鉄絵の代表格が、絵唐津で、その他に絵志野、織部などがあります。
下絵付のあるなしにかかわらず、一度釉薬を掛けて、本焼した上に低温で溶ける顔料で絵付するのが上絵付です。
低温焼成のため、上絵付の温度に耐えられる顔料は多く、色鮮やかな絵を描くことが出来ます。
上絵付は有田の染付磁器にはじまったといわれますが、その代表的なものが、かつて「ジャパン・クタニ」と呼ばれ、国際的にも有名な「九谷焼」です。赤・黄・緑・紫・紺青の五色は、「九谷の五彩」と呼ばれ、五彩手、青手などのスタイルがあります。
九谷焼に代表される上絵の技法には、赤、緑、黄、紫など様々な色を使う「色絵」や、染付の上に色絵を施す「染錦」、さらにその上に金彩を施す「金襴手」などがあります。
錦手は、染錦とも呼ばれ、藍の線で描かれた模様や絵に鮮やかな色絵を組み合わせて、華麗な絵模様を表現したものです。
下絵の染付の藍色が全体を引き締め、上絵の華やかな色合いとの絶妙なバランスを醸し出す豪華な手法です。
金襴手の金彩は、色絵を一度焼いてから施すため、手間がかかりますが、仕上がりは豪華絢爛と呼ぶにふさわしい風格を有しています。