中国陶磁器の長い歴史の中でも、最もきらびやかな美しさ放つ焼き物ともいえるのが唐三彩です。
唐三彩は、中国・唐代につくられた低火度焼成の三彩陶のことで、唐時代の華麗な貴族文化を象徴するような、色の鮮やかさが特徴的です。
唐時代の陶磁工芸を代表する唐三彩は、磁器ではなく、釉に鉛を用い、低火度で焼成した鉛釉陶器で、白地に緑釉、褐釉、ときには藍釉の三色を掛け分けて文様を表わされました。
唐三彩は、唐王朝が最盛期であった7世紀末には完成した姿を見せ、貴族の墳墓に副葬するための明器として盛んに製作され、鎮墓獣、神像、人物像、馬、駱駝、牛、万年壷、龍耳瓶、鳳首瓶など、大型で多彩な造形のものを中心として製作されました。
鎮墓獣: 墓を守護し、悪霊をはらう役目を負わされて、墓中に置かれた獣形や人面獣身などの像のこと。中国の戦国時代の楚の墓から出土するものは長舌を有する木彫像であるが、唐時代の墳墓からは有翼の唐三彩の陶製の怪獣が出土されている。
万年壷:胴が丸く張った壺で、唐時代独特のもの。
龍耳瓶:瓶の左右の肩から龍形の把手が伸びて口縁に取り付いた造形のもので、あたかも中の水を飲もうとする龍の姿を呈した瓶。
鳳首瓶:鳳凰の頭をかたどり、把手と高台を備える形式の瓶で、ペルシャ・ササン朝(226~642年)の水差しなどの銀器によくみられる鳥頭などの壺が原形とされる。
盛唐の貴族文化を背景とした唐三彩は、日常的な実用品としてではなく、このような墳墓の副葬品や建築材料として主に製作され、長安・洛陽といった都付近を中心として出土されています。
唐三彩の装飾方法としては貼花・刻花・印花といった型押しや彫りの技法を用いて、宝相華・唐草・蓮華・蓮葉・魚子・動物・人物などの文様が施されています。
陶質の素地に白化粧あるいは透明釉を掛けたのち、緑や褐色の鉛釉を加えることで3つの色が互いに入り混じり独特の文様を表し、鮮やかな色を呈しています。
唐三彩は主に白、緑、褐の三色ですが、ほかにコバルトの藍釉が加わったものや、緑・白,青・白といった二彩のものを含めて唐三彩と呼ばれます。
唐三彩の華麗な美しさと技術は、渤海三彩・遼三彩・宋三彩・新羅三彩・奈良三彩・ペルシア三彩と広範囲かつ長きに渡って多大な影響を与えましたが、唐の貴族文化が衰えると唐三彩もみられなくなります。その後の中国の陶磁器は、青磁・白磁の隆盛の時代となり、次の宋磁に引き継がれることとなります。