今にも動き出しそうな躍動感溢れる韋駄天童子
目を見張るような鮮やかな色彩と滑らかな肌から一見陶器の人形のようで見えますが、実は木彫りの彫刻です。
人形の纏っている衣装や装身具の鮮やかな色彩美には「極彩色技術」と呼ばれる伝統的な彩色技術で丁寧に彩られています。
今回は極彩色で魅せる彩色木彫家・平野千里についてご紹介します。
1948年に彩色木彫の第一人者と呼ばれる父・平野富山の次男に生まれます。
父の平野富山は日本近代彫刻の巨匠である平櫛田中に師事し、高い技術力で世界的にも知られる彫刻家です。そして日本古来の伝統的な彫刻技術であり、一度途絶えてしまった「極彩色技術」の伝統を蘇らせたのが平野富山なのです。
日本を代表する彫刻家である父の仕事を見て育った千里でしたが、彩色木彫りではなく近代的で躍動的な西洋彫刻に魅力を感じ、高校卒業後父の反対を押し切る形で1968年20歳のときに渡欧します。
ほとんど勘当状態の中、ローマ・アカデミア美術学校彫刻科でイタリア具象彫刻を代表する作家ペリクレ・ファツィーニに師事し西洋彫刻を学び、卒業後もイタリアでの滞在生活を20年続けました。
そして1988年に帰国を果たし40歳の時に父・平野富山に師事しましたが、半年後に富山は他界してしまいます。しかし、千里は一人前になるまでに10年を要すると言われている彩色の世界で、富山の亡くなるまでのわずか5ヶ月の間に技術を見事に習得し、数々の誉れ高い賞を受賞しています。
そして現在も父の意思を受け継ぎ伝統を守りながらも更なる美の世界を追求し続けています。
経歴
1948年 東京に生まれる
1966年 都立小石川高等学校卒業
ローマ・アカデミア美術学校彫刻科入学 ペリクレ・ファツィーニに師事
1972年 ローマ・アカデミア美術学校彫刻科卒業
1988年 日本へ帰国し、父・富山に師事
1989年 父・富山逝去
第21回日展初入選
1990年 第20回日彫展入選、第22回日展入選
第86回大平洋展 大平洋美術会賞受賞
1991年 大平洋美術会会友となる
第21回日彫展奨励賞受賞 第23回日展入選
1992年 第22回日彫展奨励賞受賞
1993年 第23回日彫展日彫賞受賞 大平洋美術会会員となる
1996年 日彫会を退会し、彩色木彫に専念する
1998年 平野富山、千里親子展開催
第94回大平洋展にて、文部大臣奨励賞と会員秀作賞受賞
2001年 写真家西宮正明氏による写真集「極彩」出版
以後、全国百貨店にて毎年、個展を開催。
20年間のイタリア生活で体得した木彫、石彫、ブロンズなどの西洋彫刻の技術と彩色木彫の技術を兼ね備えた平野千里の作品は、どこか西洋的な雰囲気を醸し出しながらも日本的であるという独特の作風をもっています。
その制作は西洋の石膏像の制作でみられる粘土でモデルとなる原型を制作してから木彫りを始め、彩色の際には日本画で使われる胡粉などを重ね合わせて丁寧に彩色を施され完成します。
千里は西洋文化の正確なデッサンの上に完成される動的な部分を彫刻で、日本文化のもつ感性や情緒に訴える静的な部分を彩色によって見事に融合させた仏像を数多く制作しており、作品には磁器のような滑らかな肌合いと、生き生きとした躍動感があります。
いわの美術では平野千里の彫刻作品のお買取りをいたしております。
また、平野千里の父・平野富山の作品についても同様にお買取りさせて頂いております。
その技術力の高さから国内外で高く評価されており、現在でも根強い人気があるため高額でのお買取りが期待できます。
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お問い合わせの際には、作品の大きさ・共箱の有無・状態など出来るだけ詳細にお伝えください。また、お電話口や文面のみでの判断が難しい場合はお写真を頂戴させていただくこともございます。