清水多嘉示について

1897年に長野県諏訪郡原村に生まれ、幼少の頃より絵に優れていた清水多嘉示(しみずたかし)は当初画家を志していました。中学校を中退した後は独学で絵を学び、風景画や人物画などを主に油彩で描き修練を重ねます。

1919年に高等学校の教諭として働く傍ら創作活動を続けました。

1920年に二科展に初入選を果たしてから、1923年まで同展で入選を続けるなど清水の若き才能は高く評価されていました。

そして本格的に絵画を学ぶ為に1923年にフランス・パリに渡った清水は、サロン・デ・デュイリーでオーギュスト・ロダンの弟子であるアントワーヌ・ブールデルの作品と出会い大きな衝撃を受けます。

この出会いから清水は画家から彫刻家へと転向することを決意しました。ブールデルに師事しサロン・ドートンヌへ絵画と彫刻作品を1927年まで毎年出品し入選しています。

日本人でサロン・ドートンヌ展にて絵画と彫刻の2部門で入選をしたのは清水ただ一人といわれるほどの快挙でした。

サロン・デ・デュイリーやサロン・デ・ザンデパンダンの会員に推挙されるなど日本のみならずフランスでもその才能が認められていました。フランス滞在中はブールデルに師事していたジャコメッティや、日本人画家 藤田嗣治、デザイナー イサム・ノグチらと交流を持ち研鑽の日々を送っていたといいます。

帰国後の1929年に帝国美術学校（現・武蔵野美術大学）の助教授を務め、日展、院展、国画会、春陽会展などにブロンズ彫刻を出品するなど旺盛な創作活動を展開します。

１９５３年芸術選奨文部大臣賞受賞、1954年日本芸術院賞受賞した他にも誉れ高い賞を次々と獲得し名声を得ました。

その後日展顧問や日本芸術院会員となり、後進の育成にも熱心であった清水は1969年に武蔵野美術学園の初代学園長に就任しています。

その他日展常務理事、1971年東京国立近代美術館評議員、1973年日展顧問、などの活躍が認められ勲三等瑞宝章を受章、1980年には文化功労者に選出されるなどその功績は高く評価されています。

現在では清水の制作したブロンズ像は日本全国の公園、学校、公共機関に設置され、多くの人々に愛されています。

豊かな作品で国際的にも広く活躍し美術界の発展に大きく寄与した清水多嘉示は現在も高い人気を誇ります。