美術館レポート:日本民藝館に行ってきました!
今回は日本民藝館で開催されている
『柳宗悦と古丹波』展
の概要や見どころをご紹介致します!
開催概要
企画展名 |
『柳宗悦と古丹波』展 |
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会場 |
日本民藝館 |
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アクセス |
京王井の頭線駒場東大前駅西口より徒歩7分 |
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会期 |
2019年9月10日(火)~11月24日(日) |
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休館日 |
月曜日(ただし祝日の場合は開館し、翌日振替休館) |
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開館時間 |
午前10時~午後5時
【西館(旧宗悦邸)】 【公開日】展覧会開催中の第2水曜、第2土曜、第3水曜、第3土曜に公開 【会館時間】10時~16時30分(最終入館は16時まで) ※日本民藝館本館と開館時間が異なりますのでご注意ください |
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入館料 |
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鑑賞時間 |
約1時間 |
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混雑度 |
平日は混雑なし。土日やや混雑。 |
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公式HP
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http://www.mingeikan.or.jp/ |
企画概要
約800年の歴史をもち、今では日本六古窯(にほんろっこよう)のひとつと言われる「丹波焼」ですが、
以前は一部の茶陶は評価されていたものの、全体としては雑器とみなされ芸術品として扱われる焼物ではありませんでした。
民芸運動の指導者であり、日本民藝館の創設者である柳宗悦(1889-1961)は、丹波焼の素晴らしさにいち早く気付き「最も日本らしき品、渋さの極みを語る品、貧しさの冨を示す品」と評し、表舞台へと導いていったのです。
本展は、日本民藝館が所蔵する丹波コレクションの中から約100点、さらには今年開館50周年を迎えた丹波古陶館(兵庫)の優品の中から50点が一堂に会し、中世期の自然釉の壺や江戸期に発達した赤土部釉・流釉・線彫・白掛の壺や甕(かめ)・徳利・皿など厳選品が展示される貴重な展覧会です。
丹波焼の創窯は平安時代末頃から鎌倉時代初め頃と言われ、約800年に亘り民陶の伝統が脈々と受け継がれてきました。開窯期から江戸末期までに焼かれたものを「古丹波」と呼び、これらは生産された窯の形状によって、中世期までの「穴窯時代」と近世期以降の「登窯時代」に大別されます。
一階玄関正面に「登窯時代」の作品を中心に展示。また、2階第3室に「穴窯時代」の作品を中心に展示と、その時代毎に展示場所が変えられているので、魅力の違いを楽しめるのも本展ならではです。
見どころ
1.古丹波の名品「自然釉甕(しぜんゆうがめ)」
本展のポスターにも写真が使われる日本民藝館所蔵の自然釉甕は古丹波を代表する名品で、
人工的な釉薬(ゆうやく)は使わず、穴窯の中で長時間焼くことにより、燃えた薪の灰が焼成中に器に降りかかることで自然釉となり、原土の中に含まれた鉄分と融け合い、独特な緑色や鳶(とび)色を自然に発色させ、何とも言えない景色を生み出しています。
また、表面のデコボコした風合いも灰が降りかかり固まったことによりできたもので、この自然釉を「灰被(はいかつぎ)」と呼び、焼き物の世界では大変珍重されています。
柳氏は「自然釉」は人の作為の及ばない「他力美」だと評し、「驚くべき美しさを与えている」と称賛し、丹波焼の蒐集に邁進していったと言われています。
2.平安時代につくられた作品の展示
古丹波初期といわれる平安時代末期に作られた貴重な「三筋壺(さんきんこ)」を展示。
胴の三ヵ所に横筋の文様が施され、小ぶりで、やや外に開いて立ち上がった口造りが特徴の「三筋壺(さんきんこ)」は、なぜか同時期に丹波・常滑・越前で同様の様式で焼かれている壺です。
平安→鎌倉→室町→安土桃山時代→江戸→明治→大正→昭和→平成→令和と、幾多もの時代をくぐり抜け現存する作品を間近に鑑賞できる滅多にない機会です。
3. 柳氏と中西氏との手紙の展示
柳氏が丹波焼に関心を寄せ始めるようになったのは、道具商の尚古堂(しょうこどう)に立ち寄り、丹波焼を目にしたことがきっかけでした。その後、店主・中西幸一氏とは商売を越えた付き合いを続け、多くの名品を発掘していったのです。その細かな遣り取りを二人は手紙を介して行っていたそうで、その総数300通‼二人の手仕事への情熱が伺えます。
本展では、それらの貴重な遣り取りが書かれた手紙の一部が展示されています。
手紙の中で取り上げられた作品が実際に展示されていたりもするので、手紙を拝読の上
展示物を見るのも楽しいのではないでしょうか?
4.西館の公開
本館道路を挟んで向かいに建つ西館は以前柳宗悦が生活の拠点とした建物で、日本民藝館開館の一年前1935年に完成しました。栃木県から移築した石屋根の長屋門と、それに付設した母屋からなっています。普段は公開されていませんが、今回の展覧会では曜日が限られますが(展覧会開催中の第2水曜、第2土曜、第3水曜、第3土曜日)、セットで入場することが出来ます。
おわりに
館内が写真撮影禁止の為、お写真で紹介できないのが残念ですが、日本民藝館は今ではなかなか手に入らないであろう太い梁が天上をしっかり支え、黒光りした木製の階段手すりや落ち着いた床板、無骨ながらも温かみのある木の板で作られた棚や調度品と、柳氏のこだわりが随所に詰まった、都内の喧騒を忘れさせてくれる落ち着いた空間です。
そんな空間の中でゆっくりと800年以上も前に作られた作品や、江戸時代に火消しの親方が着た鹿革製羽織など眺めていると、その時代時代の人々の暮らしぶりが浮かんでくるようです。
是非この機会に日本の美の神髄に触れられてみるのはいかがでしょうか?