京都の名工三浦竹軒の上絵付師として活躍されていた木村繁の長男として1921年京都で生まれます。
父の仕事姿を見て育った木村盛和は、必然的に陶芸の世界へ進み学校を卒業後16歳で国立陶磁器試験場へ入所して釉薬の研究に励み、陶芸の基礎知識を覚えました。
陶芸の知識を学ぶ中、1942年に戦争が勃発した事で木村盛和は召集されてしまい、少しの間陶芸を製作する事が出来ませんでしたが、終戦を迎えてすぐに京都の五条坂で開窯し独自で釉薬の研究を続けます。
焼物を製作するというよりも釉薬の研究に力を入れていた木村盛和は、世界中から岩石や鉱物・岩に宝石が付いた宝石母岩などを集め様々な釉薬を生み出しました。
その結果、1964年日本伝統工芸展に出品した天目釉変わり皿が日本伝統工芸展優秀賞、日本陶磁協会賞を受賞し、作品は近代美術館が買い上げるという功績を残し、天目釉の第一人者として多くの人々に知られるようになりました。
その後当時は珍しかったガス釜を作った事で、より深みのある天目釉の作品を作る事に成功します。
木村盛和は製作の手を緩める事なく数多くの作品を作り賞の受賞や展覧会を開くなど活躍されましたが、94歳で惜しまれつつこの世を去りました。
木村盛和が亡くなってから6年程経ちますが、現在でも彼の作品は多くの人々から高い評価を受け、人気を博しています。
木村盛和が得意とする天目茶碗は、中国が発祥のお茶道具です。
中国浙江省の天目山がある地域に留学した日本の僧侶が母国に持ち帰り、天目山の付近で焼かれた茶碗という事から天目茶碗と呼び現在に至ります。
天目茶碗が製作された北宋末期時代には、それよりも前に作られた青磁と白磁がありましたが、白磁と青磁は色が薄く少しの焼きムラなどが目立つ中、天目茶碗は色が黒く焼きムラなどが目立たなかった事から簡単に製作が出来て日用品として多く使われていたそうです。
中国茶が流行した宋時代以降、色合いや模様、天目茶碗特有の鼈口(すっぽんぐち)と呼ばれる二段構造の口造りが茶の保存に適していると惚れ込む茶人が続出し珍重されるようになります。
曜変天目:天目茶碗の中でも最上級とされ、その美しさから「器の中に宇宙が見える」と言われています。
内側の黒い釉薬の上に斑点が群れをなして浮かび、その周りが瑠璃色や虹色が光り輝き、茶碗の内側に光を当てるとその角度により虹の輝きが跳ね返ってくる事が曜変天目の絶対条件です。
現在上記の条件をすべて満たしている曜変天目は、東京都世田谷区にある静嘉堂文庫蔵美術館と大阪市都島区にある藤田美術館、京都市北区にある大徳寺龍光院に所蔵されている3点のみです。
油滴天目:器の表面に油の滴が飛び散ったような模様から油滴天目と名付けられました。
国宝に指定されている油滴天目は大阪市にある東洋陶磁美術館所蔵、重要文化財に指定されている油滴天目2点は福岡県にある九州国立博物館と京都市にある大徳寺龍光院に所蔵されています。
禾目天目:曜変天目や油滴天目の細かい粒のような模様とは異なり細かい縦筋が無数にみられるのが特徴です。
中国では細かい縦筋がウサギの毛に見える事から兎毫盞と呼んでいますが、日本では稲穂の先端についている針のような突起物の芒に似ている事から、芒の字を禾という字に変えて禾目天目と呼んでいます。
木の葉天目:曜変天目や油滴天目・禾目天目のような細かい模様などはなく、茶碗の内側に葉の模様が施された作品です。
この葉の模様は描いたものではなく本物の葉を黒い釉薬の上に乗せ焼くという技法で製作された物です。
木の葉天目で使われる葉はどの葉でも言いわけではなく、椋の木の葉が良いとされています。
その理由は、椋の葉が夏の強い日差しに照らされると珪酸(ケイサン)と呼ばれる成分が多く葉の中で作られ、その葉を高温の窯で茶碗と焼くと珪酸の成分が反応し葉脈がくっきり出て美しい模様に仕上がるからだそうです。
重要文化財の木の葉天目は大阪市にある東洋陶磁美術館に所蔵されています。
玳皮天目:黒と黄色の斑模様や黄色一色の作品もあり、その色合いは亀のタイマイの甲羅の色に似ている事から、玳瑁(たいまい)の甲という意味で玳皮天目と呼ばれています。
それ以外にも、玳玻盞(たいひさん)やタイマイの甲羅から取れる鼈甲の意味で鼈盞(べっさん)とも呼ばれていました。
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瀬戸毅己・長江惣吉・鎌田幸二・孫建興・清水卯一・青木龍山・木村盛康
その他:中国の宋時代の天目茶碗