「御茶一服差し上げます」といえば、濃茶をふるまうことで、その濃茶を入れる器が茶入です。
茶入は、一握りにも足りない小さい器ながら、陶磁のあらゆる美しさを備えたうえに、伝統的価値が加わり、茶の湯相伝の点前の上からも重要視され、その評価は非常に高いものです。茶事では、この茶入が後座の席にかざられ、客を迎えることとなります。
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茶入れは、濃茶を入れる容器のことで、薄茶を入れる場合は薄茶器と称します。茶入れは唐物と和物とに大別されます。
唐物茶入は、他の唐物の道具と同様、十二世紀末に喫茶の風習とともに日本に伝来しました。書院造の広間で行われた茶席、またはその様式を用いた茶の湯を指す、利休以前の書院茶の時代には最も重要視された器物で、戦国時代には一国一城にも匹敵するといわれた名品もありました。なお、漢作唐物ということばがありますが、唐物茶入のうち、時代が古く、特に室町時代以前に輸入された出来の良いものを、特に漢作としたようです。
和物茶入は、唐物にならったものを作ったのが発端で、おそらく14世紀末ごろに美濃窯で焼かれた瀬戸茶入れが最初ではないかと考えられています。その後、桃山時代後半には瀬戸独自の形態の茶入がつくられるようになり、江戸時代に入ると唐物茶入に次ぐ評判を得るようになります。そうしたことから和物茶入は、瀬戸茶入と、瀬戸窯以外の土地(唐津、備前、薩摩、丹波、信楽、伊部など)で焼かれた国焼茶入の二つに分けることが通例とされています。
また、古瀬戸茶入は、瀬戸焼の陶祖・初代加藤四郎左衛門景正(藤四郎、または春慶とも)が中国に渡って陶法を学び、再び帰朝して日本の土と釉薬で焼き始めたのが起源であるとされ、鎌倉から室町時代にかけてつくられた中世瀬戸窯の施釉陶器を指します。
茶入れは、全体の形や口造り、咽喉、胴などさまざまな部位により形状が異なり、茶入れの特徴として鑑賞の見どころとなっています。
文琳(ぶんりん)
文琳とはりんごの異名で、りんごに形が似ているところからきた名称です。唐物や、古瀬戸の茶入れに多く見られます。
茄子
これも形が茄子に似ているところからの名称です。唐物茶入のなかでは、この形が最上位とされます。
芋の子
小芋に似た形で、瀬戸茶入によく見られます。写真の茶入はこの芋の子にあたります。
肩衝(かたつき)
肩がついたもので、肩の形状により、撫肩や面取などがあります。
大海(だいかい)
大ぶりで口が広く、甑(こしき・口造りと肩の間のくびれ部分)が低く平丸形をしたもののことで、小ぶりなものを小大海(こだいかい)といいます。
茶入の蓋の多くが象牙でできています。このことは、象牙は毒を近づけると自ら割れるという逸話に基づいています。蓋の形やつまみにもさまざまな意匠があり、一文字蓋や盛蓋、掬蓋など、茶入のかたちと併せて鑑賞の対象とされます。
茶入の底には、轆轤から離すときの糸切りの跡が残されており、鑑賞のポイントとなります。
右回しの轆轤では右糸切(順糸切)、左回しの轆轤では左糸切(逆糸切)となります。原則として唐物は左糸切、和物は右糸切になっています。ほかに、同心円の渦糸切、箆で起こした箆(へら)起こしなどがあります。
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