日本で最も早くから磁器を焼き、染付・赤絵・金彩・色釉など、さまざまな様式による加飾で鮮やかな色使いが伝統の有田焼の地にありつつ、文様を持たない白磁を極めたことで知られる井上萬二氏ー
微細な不純物による一切の斑点も許されず「ただ厳しさのみが要求される」と語る氏の作品づくりは「形こそが文様」とされ、シンプルな造形美で『至高の白磁』と称されています。
井上萬二 佐賀県有田町出身
昭和4(1929)年、有田焼の窯元に生まれましたが、軍人を志し15歳で海軍に入隊します。翌年に復員し17歳で陶芸の道に進み、十二代酒井田柿右衛門や初代奥川忠右衛門の門下生として白磁や轆轤の技術を学びました。
29歳の時に酒井田柿右衛門窯を退社したのち、有田窯業試験場の技官として働くかたわらで成形や釉薬の研究を重ね、昭和46(1971)年42歳で独立します。
活躍の場は国内のみならず、ペンシルベニア州立大学にて作陶を指導したのを皮切りに4回に渡って有田焼の講師として渡米したほか、ドイツ、ハンガリー、ポーランドなどでの個展や、モナコ、カナダ、北・南米での展覧会に出品するなど、海外での活動も多岐にわたります。
現代の名工労働大臣表彰、日本伝統工芸展文部大臣賞など数々の受賞を経て、1995年には重要無形文化財「白磁」の保持者、いわゆる人間国宝に認定されたほか、紫綬褒章、旭日中綬章など輝かしい受賞歴を持ちます。
2020年に技術を継承していた息子の井上康徳を病気で失い、深い失意に沈みますが、息子に代わって孫の祐希が跡を継ぎ本格的な作陶活動を展開しています。
窯元の修業が13年、窯業試験場での研究が13年。「26年という長い歳月は加飾の必要のない形こそ文様であることを悟らせた」と振り返っています。「仕事をしているときが一番健康的」と語る今年御年95歳になった白磁の人間国宝は「創り手に雑念があるうちは名陶を生みだせない。だから心と技を磨き続ける」と『名陶無雑』を座右の銘に掲げ、今日も作品と対峙しながら造形の美しさを追求しています。
一切の装飾を行わず、高度なろくろ技術による成形と無色透明の釉薬による独特なつやで究極の美を表現した萬二氏ですが、作品のなかには今回ご紹介したように麦や牡丹、椿など植物の彫文がほどこされたものもあります。いずれの作品も、凛とした美しさのなかに温もりや柔らかを兼ね備えおり、中古市場でも「用をかねた美」と需要が高く、花瓶や壺をはじめ茶碗や皿、湯呑などあらゆる作品が高額で取引されています。
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