写真のお品物は、いわの美術でお買取りいたしましたドーム社製クリスタルオブジェ、イーグルです。
アール・ヌーヴォーのガラス工芸界を代表するドーム兄弟から続くドームクリスタルは、100年を超す歴史の中でつねに時代を代表するデザイナーを起用し名品を生み出してきました。
ドームクリスタル社は、ドーム兄弟の父ジャン・ドームがナンシーで始めたガラス工場「ラ・ヴェルリ・ド・ナンシー」に始まり、1879年に兄のオーギュスト・ドームが経営に参画し始めは「ドーム・エ・フィス」(ドーム親子)という社名でした。
父の没後1887年に弟のアントナン・ドームが入社するとドーム兄弟による創作の時代が始まり、この頃パリ万博において木工家具からガラス工芸まで多岐に渡る部門で成功を収めていたエミール・ガレに触発され、1891年に美術工房を設立します。
初めは高級グラスセットを主力商品として、1893年のシカゴ万博でカメオガラスが特別無審査出品賞を受賞すると兄弟経営が軌道にのったことから社名を「ドーム・フレール」(ドーム兄弟)に改称しました。
翌年ナンシー装飾美術展のリヨン博覧会で金メダルを受賞し、フランクフルト、ストラスブール、パリに委託販売所を設け事業は順調に拡大します。
19世紀末に興隆するアール・ヌーヴォーは古典美術の画一的な美意識への疑念から生まれ、過去のいずれの美術様式にも根差さず新たな芸術表現を模索したものでした。1878年のパリ万博でサミュエル・ビングにより紹介された日本美術のもつ西洋との異質性、植物や昆虫、小動物をモチーフに捉えることや左右非対称な構図などはジャポニスムとして時代を席巻し、印象派の画家をはじめアール・ヌーヴォーの作家達にも影響を与えます。
それまでフランスのガラス工芸はボヘミアンガラスやベネチアンガラスなどに比べとりたてて特徴のない物であったのが、アール・ヌーヴォーの代名詞ともいえる植物様の有機的な曲線はガラス工芸を工芸の枠を超えた芸術として昇華し、新たな境地を開拓します。
パリで流行の始まっていたアール・ヌーヴォーは1895年にサミュエル・ビングの開いた画廊から加速度的に広まり、1900年第五回パリ万博で世界へ波及し、この時ガラス部門でドーム兄弟はグランプリを受賞、アール・ヌーヴォーを代表する工房となりました。
翌年エミール・ガレを会長にナンシー派が形成され、アントナン・ドームは副会長に就任し、ナンシーはパリに並ぶフランスのアール・ヌーヴォー最大の拠点となります。
古代のガラス製法であるパート・ド・ヴェールの復元と量産体制を築くことに成功し、アンテルカレールやヴィトリフィカシオンの技術で特許を取得するなどガラスの芸術表現を究めドーム・ナンシーの最盛期を迎えますが、1909年にオーギュスト・ドームが急逝し、1911年に三男のポール・ドームが新たにドーム社に加わりました。
アール・ヌーヴォーの時代も終焉し、間もなく第一次世界大戦となり一時操業停止を経たのち、戦間期に好況を取り戻し1925年に第二工場を開設、従業員数は500名を超す有限会社となります。
豪華客船に納めるクリスタルグラスの製造など大口の仕事も増え、ポール・ドームはパリ万博ガラス部門の審査員となりました。
しかし世界恐慌による不況から苦難の時代が始まり、第二工場は1934年に閉鎖となり、第二次世界大戦へ入ると再び創業停止ののちポール・ドームがレジスタンス活動の嫌疑をかけられ逮捕、1944年に獄死したためアンリ・ドームとミシェル・ドームが経営を引き継ぎます。
苦難を経て1945年、工場を再開するとオーギュストの孫のジャック・ドームとアントナンの孫アントワーヌ・ドームが入社し、戦乱期を超えてドーム一族による経営が存続することとなりました。
1948年にミシェル・ドームのディレクションにより純度の高い透明クリスタル作品の制作を開始すると以降20年にわたりドーム社の看板製品となり、1968年にパート・ド・クリスタル技法を復活させドーム社独自の技法に昇華させ、またサルバドール・ダリとの共同制作を発端にアーティスト達とのコラボレーションを始めました。
1976年にジャック・ドームが没し、ピエール・ド・シャンゼリゼ・ドームがドーム家最後の社長となりますが、現在まで創業から変わらぬナンシーの地で高級クリスタルメーカーとして操業を続けています。
ドームクリスタルの製品は、意匠の凝ったものほど制作数も少なく限定販売となっており、また非常に高価であるため中古市場でも人気のお品となっております。
長い歴史を持つドーム社ですが、とくにドーム兄弟が在籍した19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォ―時代の作品は希少性の高いアンティークであり、一般の市場に流通することは少なくなっています。
いわの美術では美術品・骨董品を中心に幅広くお買取りしております。ドームクリスタル、エミール・ガレ、ルネ・ラリックなどアール・ヌーヴォーの面影を残すガラス工芸品も過去に多数お買取り実績があり、専門の査定員が大切に拝見いたします。
ご自宅やご実家、蔵や倉庫、別荘などのお片付けをされていて、ご売却をお考えのドーム兄弟、ドームクリスタルのお品物がありましたら、いわの美術へお任せくださいませ! その他絵画、洋食器、オーディオ機器など他の品目と合わせてのお買取りも可能となっております。
お買取り査定のお申し込みはお電話・メール・LINEにて受付しております。メールとLINEではお写真を拝見するとオンライン無料査定が可能となります。まずはご相談くださいませ。お客様からのご連絡をお待ちしております。