写真のお品物は、いわの美術でお買取りいたしました、歌川国貞(うたがわ くにさだ)の浮世絵版画です。
歌川国貞は江戸後期の浮世絵師で、歌川広重・歌川国芳らと同時代に随一の人気を誇りました。
今回のお品物は、歌舞伎のひと場面を描いた役者絵で、役名の「石堂采女之介」「白拍子桂木」が描き込まれています。
江戸前期に上方で栄えた元禄文化は、豪商と武士を中心に文芸と学問が発展を見せました。
文化・文政の頃を中心とした18世紀末から19世紀初頭には、今度は江戸が文化の中心となり、さらに広い町人層を主体とした化政文化が栄えました。
現在でいうところの江戸の風俗は、多くは化政文化の頃のもので、庶民生活を面白く書いた滑稽本、読本、合巻、風刺的な川柳などが好まれ、歌舞伎は全盛期を迎えます。
そして版画技術の向上と、余裕のうまれた町人層の需要にともない、浮世絵(錦絵)が空前の発展をみせました。
歌川国貞はこの化政文化の時期に活躍し、江戸風俗を描いた美人画、人気の歌舞伎役者を活写した役者絵、物語の武者絵など、江戸化政文化の発展に寄与しています。
歌川国貞は美人画と役者絵を得意とし、人気絵師となってから50余年もの長きにわたり第一線で活躍し、非常に多作で作品総数は1万点以上と言われています。
号は五渡亭(ごとてい)・香蝶楼(こうちょうろう)・一雄斎(いちゆうさい)・一陽斎(いちようさい)・喜翁(きおう)などを名乗っています。
歌川国貞は本名を角田庄五郎といい、1786年に江戸本所五ツ目に渡し船の株をもつ裕福な材木問屋の家に生まれました。
15,16歳で歌川豊国の門下に入り歌川を称し、19歳で国貞の名を授けられます。
1807年に曲亭馬琴の合巻「不老門(おいせのかど)化粧若水」で初めて挿絵を手掛け、同年美人画も描き始め、絵師として本格的に活動を始めます。
翌年、司馬江漢の洋風画やオランダ経由で輸入された油彩画・紅毛絵の画法をとりいれた「紅毛油画名所尽」「紅毛油画尽」シリーズを刊行し、新たに風景画でも評価を得ました。
山東京伝の合巻「鏡山誉仇討つ」、鶴屋南北「敵討乗合囃」の挿絵を手掛け、とくに式亭三馬「大津土産名画助刀 吃又平」の挿絵は出世作となります。
1809年には一枚摺錦絵の初作として役者絵「風流見立大津絵」を制作し、続いて美人画の錦絵三枚揃「江戸三木之内」を手掛け、人気作家の常連挿絵絵師となります。
1812年(文化8年)ころから名乗った五渡亭の号は、狂歌師の大田 南畝(おおた なんぽ)に付けられたもので、1843年頃まで最も長く愛用しました。
師である歌川豊国は役者絵の人気筆頭絵師ですが、同年の「大当狂言之内」は師をも超える傑作と評判になり、翌1813年の戯作者浮世絵師見出番付で大関豊国に次ぐ関脇にランク付けされ、大判錦絵や三枚・四枚続の大作を手掛ける人気絵師となります。
1825年、いわゆる春画の含まれる艶本を初めて手掛け「百鬼夜行」を刊行し、この頃から不器用又平の号で多くの艶本を手掛けました。
また、画題と並んで技法の開拓にも飽くなき探求心が発揮され、歌川国貞から1世紀あまり遡る英派(はなぶさは)の始祖、英一蝶(はなぶさいっちょう)に私淑します。
蝶の字を引用した香蝶楼の号を名乗り、1830年には英派当代の英一珪に師事し、みずから英一螮(いってい)と号し、師と合作で「閻魔覗明鏡図」を制作しました。
この頃、国貞の美人画はこの頃から猫背猪首のスタイルが完成し、吉原の人気遊女をはじめ、当世風俗を粋な画面に遺しています。
1840年代の世相は、天保の改革が始まると奢侈が禁止され、2年余りの期間に七世市川団十郎が江戸追放の憂き目にあい、浮世絵の画題も役者絵や遊女が禁止されるなどしました。
水野忠邦失脚後、徐々に江戸の町人文化が息を吹き返すと、1844年に師・豊国の名を継いで三代豊国を名乗るようになり、物議を醸しながらも画業はベテランの域に入ります。
この時点で59歳と江戸時代では老齢に達しているものの、門下の三代目歌川国政や豊原国周など明治に続く後継者を育て、晩年の役者大首絵シリーズは国貞の集大成ともいえる傑作となりました。
国貞は同時代の国芳・広重ら歌川同門の絵師のなかでも最も長命の79歳まで生き、江戸時代の終焉にちかい1865年に逝去しました。
明治維新の直前まで画業をつづけた歌川国貞の作品は、現在も中古美術市場で人気のお品です。
浮世絵は版画であり印刷物ですが、刷られた時期により版元が異なり、おなじ絵でも価値が異なる場合があります。
歌川国貞の浮世絵、美人画・武者絵・役者絵・名所絵・春画など、また歌川国貞が挿絵を手掛けた草紙類は、古美術品として重要なお品物です。
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いわの美術では骨董品と美術品を幅広くお買取りしており、浮世絵も多数お買取り実績がございます。
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