写真のお品物は、以前いわの美術でお買取りいたしました、ミントンのトーマス・グッド別注飾り皿です。
ミントンはテーブルウェアの貴婦人と名高く、王室御用達の名店同士のダブルネームというアンティークの銘品です。
ミントンは1793年に銅版転写の彫刻士トーマス・ミントンによって創業したイギリスの陶磁器メーカーです。
2代目ハーバード・ミントンの時代に生産性と芸術性が向上し、金彩を施した豪華な食器は世界一美しいボーンチャイナと称され、1856年に王室御用達となりました。
1863年に酸の腐食を利用し金に浮彫効果を与える、高度な金装飾技法であるアシッドゴールド技法を確立し、次に金を直接盛り付けるレイズドペイストゴールド技法も開発されました。
1870年には最高の装飾技法とまで言われたパテ・シュール・パテ技法を導入します。
この技法はフランスのセーブル窯所属であったソロンが開発したもので、普仏戦争を避けロンドンへ移るとともにミントン社が引き抜いてその技術と才能を確保しました。
パテ・シュール・パテ技法は、素地の上にペースト状の盛り上げ材を塗り重ねて絵柄を書き込み、立体感と透明感を同時に叶える非常に難しい技法で、ソロンの弟子を含め1939年まで制作されますが、その後1992年にようやく再現に成功する職人が現れるまで技術が途絶えていました。
20世紀に入り第二次大戦後からは、従来の金彩を用いたものからハドンホールなど名作デザインが主流となりました。
ハドンホールはデザイナーのジョン・ワズワースがハドンホール城のタペストリーに着想を得て製作した柄で、定番のグリーンのほか1990年代になってからブルーやセレブレーションなどバリエーションも生まれ、ミントンの代名詞となっています。
ミントン社は惜しまれながらも2015年に長い歴史の幕を閉じ、事業を終了しており、今後は中古市場で大切に扱われてきた陶器たちの評価が高まる機運が見込まれています。
トーマス・グッド(Thomas Goode)は1827年にロンドンにて設立された、陶器とガラス、シルバーの食器を専門とする専門店です。
初代のトーマス・グッドの息子、ウィリアム・グッドがより良い陶磁器を追い求めて世界を旅したのち、ヴィクトリア女王やロマノフ家を含むヨーロッパの名家にふさわしい陶磁器を展開する事業で成功を収めました。
18世紀ロンドン有数の高級住宅街だったメイフェア地区は、その後歴史ある美しい建築を店舗に転用し商業エリアとなり、現在も高級店が立ち並んでいます。
トーマス・グッドも1845年からメイフェア地区半ばのサウス・オードリー通りに店舗を構え、長年の実績と品質から1863年に王室御用達となりました。
現在に至るまで世界中のイギリス大使館の公式ディナーセットに採用され、各国の王侯貴族からのスペシャルオーダーも多く、上質なものを愛する人々の食卓に豪奢で最高品質の製品を届けています。
写真のお品物はヴィクトリア朝時代のアンティーク品で、ミントンがトーマス・グッドに別注した希少なモデルです。
縁取りの金彩と七宝焼きのように重ねられたターコイズブルーの釉薬が美しく映え、現代のミントンとは一線を画す魅力があります。
シノワズリ趣味の加わった雷文で縁取られ、エナメル彩色で二羽の水鳥が描かれています。
地のエナメルに割れが見られますが、欠けなどはなく桐の共箱もあり全体的に状態が良く高評価でのお買取りとなりました。
アンティーク食器を始め洋食器のご売却の際は、割れや欠け、傷などのダメージが少ないことが重要となります。
ミントンは2015年に事業終了しており、今後ますます中古市場で需要が高まることが期待されます。
ご自宅やご実家、蔵や倉庫などのお片付けで、アンティーク・ミントンのご売却をお考えでしたら、ぜひ、いわの美術へご一報くださいませ。専門の査定員が拝見し市場を鑑みた最高値でお買取りできますよう尽力しております。
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パテ・シュール・パテ技法