いわの美術で先日お買取りしたお品物から、中島宏の青磁壺をご紹介いたします。
中島宏は独自の青磁で不動の地位を築いた陶芸家です。
古陶磁を踏襲しながら一線を画す世界観は「中島青磁」「中島ブルー」と呼ばれ、2007年に重要無形文化財保持者となり人間国宝に認定されました。
青磁の起源は中国華南にあり、浙江省の龍泉窯で焼かれたものが最初の青磁として出土しています。
龍泉青磁は日本に伝来し、貴族や大名など時の権力者らに蒐集されました。
日本の文化財に指定されている青磁17点が龍泉で作られ、うち3点は国宝となっています。
日本における龍泉窯の青磁は、制作時期によって3つに分けられ、
南宋から元初期に作られた「砧青磁(きぬたせいじ)」
元から明初期にかけての「天龍寺青磁」
明から清に作られた「七官青磁」
となります。青磁には青と緑がありますが、日本で好まれたのは淡い青でした。
中島宏(なかじま ひろし)は1941年に陶芸の盛んな佐賀県武雄市で生まれました。
父も磁器の窯を営み家業として10代から陶芸を始めましたが、当初はあまり陶芸に惹かれなかったと語っています。
中島宏には4歳上で同じく陶芸家となった兄・中島均がおり、兄が1958年の日展に弱冠21歳で初入選したことが、陶芸家を目指す契機となりました。
そして20代の時に調査に赴いた古窯跡で、青磁の陶片を見つけ美しさに感銘を受けたことが転機となります。
青磁をつくりたい旨を父や周囲に相談するも、青磁は難しく仕事として成り立たないと諭されますが、反対された事が逆に闘志に火をつけることになりました。
青磁なら他に競争者が少なく、自身の存在感を示せる分野となると考えた若き中島宏は、文書での勉強と土と釉薬の実地研究を重ねます。
兄と切磋琢磨しながら真逆の個性を育て、兄が辰砂で入選したことに発奮し、自分は青磁で賞を取るとさらに邁進、青磁以外にも唐津や金彩、色絵、天目などあらゆる焼き物も経験しました。
1969年に28歳で弓野古窯跡に築窯し独立すると、同年に兄の日展に対し出品した日本伝統工芸展で初入選となり、頭角を表します。
元来、青磁というと釉薬の淡い青または緑の美しさを主役としたシンプルな造形が想起されますが、中島宏は古典倣いに留まらず釉薬と造形の妙技を極めていきます。
自然豊かな風景から得るインスピレーションを、青磁の伝統技術と自身の感性によって昇華し、1977年には日本伝統工芸展で日本工芸会奨励賞を受賞、良作を次々に発表し順調な活躍を続けます。
しかし1981年に第一回西日本陶芸展で内閣総理大臣賞を受賞した同じ年、兄の中島均がわずか44歳で早逝しました。
喪失感の中でも制作の手を止めることはなく1983年には日本陶芸協会賞を受賞、新たな表現を絶えず模索し、弛まぬ研鑽を積み重ねました。
1990年に佐賀県重要無形文化財の指定を受け、1995年にイギリスの大英博物館に「青磁大窪」が収蔵され、翌年にMOA岡田茂吉大賞、藤原啓記念賞、佐賀新聞文化賞を受賞し、1997年には佐賀県知事から功労賞を送られます。
2005年の日本伝統工芸展では青瓷線彫文平鉢でNHK会長賞を獲得し、2006年に日本陶磁協会賞金賞を受賞するなど、制作の勢いは衰えることなく続きます。
2007年に重要無形文化財「青磁」保持者として人間国宝となり、2012年に旭日小綬章を受章しました。
晩年は佐賀陶芸会会長も務め、後進の指導もしながら最期を迎えるまで制作を続け、2018年に逝去されました。
中島宏の青磁は中国の宋青磁の写しから始まり、その後朝鮮の古窯や中国龍泉窯の研究をするうちに革新を求め、独自の青磁を開拓していきました。
伝統的な技法に習熟しながら、自由な表現を求めて試行錯誤し、偶然の窯変から生じた美しさを見逃さず、再現できるよう研究を徹底しました。
妥協を許さぬ姿勢で「中島青磁」「中島ブルー」とまで呼ばれる世界を築き上げます。
端正な器形と柔らかな色彩は共通するものの、訪中時に見た青銅器から着想を得たとする幾何学的な模様は、長きに渡って中島宏の作品を彩る大きな特徴となりました。
陶彫または彫文掻き落としで刻まれた模様は微細に変化しながら続き、整然としたリズムを生み自然への畏敬が込められています。
青磁特有の貫入も意匠として効果的に用いられ、乱れず繊細優美に器面を彩り青の美しさを引き締めています。
これらで作風を確立し人気を獲得しながらも、中島宏は新たな表現に進み続ける生粋の芸術家で、青磁に辰砂や紅釉を掛け合わせた薄桃色や紫の作品も生み出しました。
また後年の作では露胎釉彩にも挑戦し、土そのものを見せながら、釉薬が流れ落ち単一でない色合いを作り出し、橙や薄緑など新たな色彩を含み青磁の新たな美を創り出しています。
青磁の人間国宝は中島宏のほかに、佐渡の三浦小平二と、美濃の塚本快示の2名となります。
他に人気の作家として瀬戸の岡部嶺男も知られ、いずれも市場で高価格帯で取引される銘品を輩出しています。
いわの美術では美術品・骨董品を中心にお買取りを行っております。
陶磁器は人気の高いジャンルで、茶道具の茶碗・花入れ・香炉・水差しなどから、花瓶や湯呑など日常の食器まで様々な品目をお取り扱いいたします。
中島宏は独自の青磁の道を切り開き、飽くなき探求心で晩年まで良作を残し続けました。
2018年に逝去された現在、中古美術市場で作品の人気が高まりつつあります。
人気の高い品物には壺が多く、特に丸みのある壺の大きなものは高額となる傾向にあります。
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中島宏の作品をご売却される際には、品物のダメージの有無、共箱の有無、同封の栞などがポイントとなります。
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