写真のお品物は以前いわの美術でお買取りいたしました、門間箪笥店製 仙台箪笥の小箪笥です。江戸から続く伝統の地方箪笥で、古くは大型の箪笥が武家や貴族などの旧家の嫁入り道具などで重用されていました。
現代の生活様式の変化に合わせ登場した小型の仙台箪笥は、近年人気の主流となっています。
宮城県の伝統工芸に指定されている仙台箪笥の起源は古く、現在の様式が確立したのは江戸時代末期と言われています。
伝統的な大きさの仙台箪笥は刀の鞘や裃(かみしも)を収納できる幅4尺・高さ3尺3寸で、現代の整理箪笥やローチェストより一回りほど大きなものでした。
武士の実用家具であったことから野郎型とも呼ばれ、各工程の緻密さから元来大変高価な箪笥で、素材はおもにケヤキや栗を使用し、「指物」「塗」「金具」の3工程に分かれそれぞれ熟練の職人技術を要します。
天然木を素材とする箪笥制作は2つとして同じものが無く、木の性質を見極め木取りから組み立てから仕上げまでを熟練の指物師が行います。
実用のため堅牢に完成した指物に、複数の工程で工芸的な美しさを加味するのが塗りの工程となります。
仙台箪笥では半透明で木目が透けて見える木地呂塗りと、シンプルな仕上がりで技の熟練度が問われる拭き漆、朱色塗の3種類が用いられ、いずれも塗りと磨きの工程を交互に行うことで鏡面のように輝き、漆の下の木目が際立ち経年とともに深みを増す重要な役割を担います。
最後に取り付けられる金具は、元は刀剣の鍔などを制作していた金工が手掛けたもので、箪笥をひと際華やかなものに仕上げます。
龍や獅子、牡丹や菊など吉祥紋や唐草などの装飾文様が施され、和箪笥でありながら和だけでなく異文化情緒も垣間見えることが人気の一端であると言えます。
門間屋は1872年、仙台藩の足軽であった初代・門間民三郎が内職で箪笥制作を始めて創業し、以来140年に渡り同じ土地で製造を続けています。
地場産業として創出された仙台箪笥生産の全盛期は明治から大正の中期で、当時はヨーロッパへも輸出されていました。
3代目の門間民造は仙台箪笥の職人修行に加えて指物技術を体系的に学び、1928年に輸出産業奨励の一環として開所された仙台の工芸指導所にも携わります。
また、昭和初期の早い段階で指物・塗の工程を各1人の職人に任せ、製造した箪笥に責任と誇りを持てるようにし、長きにわたりアフターサービスを提供できる体制を整えました。
第二次世界大戦の混乱期を挟んでも技術を途絶えさせず継承させた功績を称えられて、門間民造は1957年に黄綬褒章を、1959年には藍綬褒章を受章し、1966年に勲5等瑞宝章を受勲しています。
伝統技術の継承と並んで、江戸指物出身の名人・青柳源次郎を工房長に迎え、1960年代とごく早い時期から、高度経済成長期を迎え変化する住環境に適した小型の新製品を開発する進取の気性に富んでいました。
1995年には、伝統的な仙台箪笥が実際に使用されていた旧家の室内を再現し、伝承文化を広く伝える仙台箪笥伝承館をオープンし、2002年に文化庁より店舗と工房が登録有形文化財に指定されました。
住環境の変化や時代に合わせて小箪笥やモダンデザインと仙台箪笥の技術を融合した新製品の発表にも精力的に取り組み、2011年には猫脚両開きの中型箪笥が、2013年にはコンソールがグッドデザイン賞を受賞しています。
写真の門間箪笥店製 小型仙台箪笥は、左右対称の安定した美しい造形に、正面の大きな金具と上下にあしらった牡丹が華やかに映える逸品です。
門間箪笥店の仙台箪笥は、内部まで丁寧に漆塗りが施されているのが特徴で、木地呂塗りの漆に経年の味わいが出、金具等の傷みもなく大変良い状態であったため高評価でのお買取りとなりました。
小型であっても新品で買い求めると高価な仙台箪笥は、中古市場でもお取引が多く、良品は高値となる場合が散見されます。
仙台箪笥は代々受け継いで100年使用することを想定して堅牢に作られており、ビンテージやアンティークとなったお品は漆が飴色となり、金具の質感などにも新品とは異なる魅力があります。
いわの美術では骨董品・美術品を中心にお買取りしておりますが、中古市場にて人気の高い仙台箪笥などの時代箪笥も対象としており、多数お買取りさせていただいた実績がございます。
仙台箪笥の他にも小木箪笥や八幡箪笥などの船箪笥、庄内箪笥、米沢箪笥などもお買取り可能な場合がございます。
お住いの変化でご自宅やご実家の整理、蔵や倉庫のお片付けで、ご売却をお考えの仙台箪笥がございましたら、ぜひ、いわの美術へご連絡くださいませ。
箪笥のほか絵画や書画、掛軸や茶道具など他の品目と合わせてのお買取りも可能です。
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