先日いわの美術でお買取りいたしました、笙(しょう)をご紹介いたします。
笙は日本の伝統音楽である雅楽に使われる笛の一種で、奈良時代に渡来し日本で発展した和楽器のひとつです。
雅楽と聞いてイメージされる、独特の音階から成る高音の和音を担当し、透明感ある音は天から差す光を表すとも言われ、神性を感じさせます。
鳳凰が羽を休めている姿にみえることから鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれます。
お椀のような形の木製の土台を頭(かしら)または匏(ほう)と言い、17本の長短の竹管が正円状に差し込まれ、15本に簧(した)というリードがあり呼気で振動させて音を出します。
音程は竹管の長さではなく屏上(びょうじょう)という穴で決まり、ハーモニカなどと異なり吹く・吸う両方で同一の音が出るため、長い音を途切れず演奏することができます。
呼気の水分による結露が簧に影響するデリケートな性質のため、演奏前と演奏途中に火鉢やヒーターで頭を温める必要があることが特徴です。
竹管の素材、節の数によってランクが分かれ、最良とされるのは煤竹です。
煤竹とは茅葺屋根で長い年月燻されたもので現在は入手困難なため、近年は煤のかかっていない素竹や人工煤竹、染め、もともと黒みのある竹が用いられます。
また竹管の節の数と位置でも分類され、ピラミッド状に配された上半分が3つのものが三節、5つだと最高級の本節となり、並びが欠けたり変わったものは乱節と呼ばれます。
笙は中国から伝来し、平安時代の日本で現在の形に発展しました。
笙の起源は大変古くまだ研究途上ですが、孔子の編纂といわれる「詩経」に笙の記述があり、「礼記」では中国神話上の女媧が笙のリードを作ったと記されています。
前漢の頃に日本に伝えられている笙の形となり、唐代に遣唐使によって飛鳥・奈良時代の日本にもたらされました。
正倉院には当時の笙と、笙より一回り大きく1オクターブ低い竿(う)が合わせて6管おさめられています。
渡来した笙は日本古来の神楽と共存し、他の楽器とともに洗練されていき、年月をかけ平安時代に現在伝わる雅楽の管弦「三管両弦三鼓」編成が完成し、篳篥・龍笛と並び主旋律を担う重要な位置となりました。
奈良・平安時代に現在の雅楽の様式が確立されますが、楽曲には渡来したものと、それ以前から伝わるもの、新たに作られるものがありました。
日本古来の楽曲を「国風歌舞」(くにぶりのうたまい)と言い、中国・インド(天竺)、南ベトナム(林邑)から伝来したものを「唐楽」(とうがく)、朝鮮・中国北東部からのものを「高麗楽」(こまがく)と呼び、さらに器楽合奏の管絃(かんげん)と舞のある舞楽(ぶがく)に分かれます。
平安時代に雅楽として編成された曲には、庶民の歌曲に拍や節をつけ整えた「催馬楽」や、漢詩に拍節的ではない節をつけ歌う「朗詠」があり、室町時代に消失したものも近代に入り譜面から復元されました。
雅楽の楽曲では高麗楽の一部を除き、ほとんどの管絃に笙が含まれ、重要な役割となっています。
三味線や琴をはじめとする和楽器のなかでも、雅楽にもちいられる楽器は稀少なものです。
とくに時代を経て往時の材料が入手困難となった笙は、煤竹・本節などは高額品となります。
素竹で作られた笙であっても、状態が良くハードケース付きなどは高評価となる場合があります。
笙の状態の評価としては、
簧の不具合・息漏れなどの有無、
頭と竹管のダメージの有無、
煤竹や素竹などの素材、
頭の装飾、
竹管を束ねる帯の素材、
ケースなど付属品の有無
これらが重要となります。
いわの美術では美術品・骨董品を中心にお買取りを行っていますが、楽器のお買取りにも力を入れており、雅楽器・和楽器も対象とし過去に多数お買取り実績がございます。
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