棚谷勲(1943-1988年)は洋画家の小磯良平に師事し、東京芸術大学油画科在学中に版画制作を始め、卒業後は銅版画家として活躍しました。千駄木にアトリエを構え、詩人の諏訪優らと親交をもち、没後の今でも諏訪の命名によるアトリエ坂の愛称が残されています。多くの作品は銅版画集に纏められており、詩とともに納められたものもあります。
棚谷勲の銅版画はモノクロームの内面世界を描いたような作風で、硬質な線が画面を暗く幻想的なものにしており、タイトルや詩と呼応して見る者に作家の深い精神を伝えます。作家が詩作も得意としたことから具象表現より抽象表現が活きていると言えます。
写真のお品は以前いわの美術がお買取りしました、棚谷勲の銅版画集「潜球飛行」です。1978年の刊行で限定100部数のみの発行、布箱に収められた丁寧な装丁となっており、年月を経た今も20枚の版画すべて保存状態が良く、高評価でのお買取りとなりました。
1974年の前々作「月と砂山」、1976年の前作「MOMBACH幻想」に収録された作品から様々な変化がみられ、シンメトリックで直線的な構図に代わり、カメラ的な遠近法を廃し主観的空間を表現した曲線が多く見られ、作風の変化が楽しめます。象徴的に多用されるフェンスや鬱蒼とした木々の枝など、人間の不可視の部分を絵として写し出す作家独自の表現が非常に印象的です。
棚谷勲は銅版画のほか油彩画・素描集も残しており、こちらは希少性から中古市場で高値のお取引が見られます。 銅版画集の場合は装丁と内部の状態・直筆の署名やナンバーの有無が査定のポイントとなります。
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