写真のお品物は、いわの美術でお買取り致しました、古鉄鉢です。
鉄鉢(てっぱつ)は禅宗の僧侶が托鉢・食事の際に用いる鉢で、応量器とも呼ばれます。
優れた金工の手によって口縁は薄く延ばされ、鉄と思えないほど軽く仕上げられたものが多くあります。
鉄鉢は古仏具としてのみならず、骨董としての需要が増しており、鉄特有の赤錆などが生じているものの、高評価でのお買取りとなりました。
仏僧は最低限の物をもち、仏の教えに沿ってそれぞれの宗派で修業を重ねます。
鉢は仏僧の最低限の持ち物として定められる「比丘六物」の一つに数えられる大切な道具です。
比丘六物は僧伽羅(そうぎゃり)・鬱多羅僧(うったらそう)・安陀衣(あんだえ)の大衣・上衣・内衣と、鉢・尼師壇(にしだん)・漉水嚢(ろくすいのう)の6点で、このうち座具と浄水器である後半2点を除いて、三衣一鉢とする場合もあります。
禅宗僧侶が檀家を回り喜捨を乞う托鉢は、明治に入り物乞いとして禁止されるまで、仏教伝来以来長く続く伝統でした。
鉢は托鉢と食事でも用いられ、最も大きい鉢を頭鉢(ずはつ)といい、これに入れ子となる4種の鉢が付属したセットを応量器と呼びます。
応量器という呼称は禅宗のうち曹洞宗に固有のもので、ほかに持鉢(じはつ)と言います。
仏教の戒律で応量器の材質は土または鉄を基本とし、木の使用を禁止していました。
これには仏教の伝来元である南アジアでは木製食器が高級品で普及品ではなかったこと、僧侶の生活では衛生管理が問題となった事が考えられます。
しかし日本では漆塗りは鉄とみなして解釈し、木製だけでなく薄い鉄製の鉢を長く使うためにも、漆を塗り補強する習慣がありました。
漆器も現在では高級な伝統工芸品になりつつありますが、少し時代を遡ると日用の器として普及し、現在と異なる状況にあったと言えるでしょう。
現在、日本の仏教界では新たに作られ使われる鉄製の鉢は減少し、漆器の応量器が主流となっています。
現在の古美術市場では、鉄製のほか銅、銅と錫の合金である砂張(さはり)、木製の漆塗り、鉄胎の漆塗りなど多岐にわたる素材が見られるようになりました。
応量器の伝統は非常に古く、日本に残るものには飛鳥・奈良時代の金銅製応量器などがあり、重要文化財に指定され保存されています。
独特の丸みを帯びた形状は、本来の仏具としての役割を離れたところでも人気を得て、とくに花器に用いられるケースが多く、古い鉄鉢の人気が高まる一因となっています。
骨董品として流通する古い鉄鉢には、古くは桃山時代まで遡るものも散見され、多くは江戸時代の品物となり、錆や漆の剥落が見られます。
通常の骨董であればダメージとして捉えられる錆なども、焼き物同様これらも景色として楽しまれます。
今回お買取りしました写真のお品物も、打ち出しで薄く延ばし成型された古風な鉄鉢で、全体に錆が生じていますが詫びのある良品物として、高評価でのお買取りとなりました。
現代のミニマリスト好みともいえる応量器は、日本の伝統美を備えるシンプルで完成された姿形から、骨董愛好家に蒐集されています。
新品として流通している応量器は木製の漆器が主流であり、骨董の鉄鉢とは大きく異なっています。
骨董の鉄鉢はおもに花器として求められることが多く、仏僧の生活に満ちる禅の意識が、美術的な価値を帯びる特異な転用とも言えます。
一見すると古びた鉄器に見え、価値のわかりにくい古鉄鉢ですが、骨董市場での価値は高く、見逃せないお品物の一つです。
いわの美術では骨董品・美術品を中心に幅広いお買取り実績がございます。
蔵や倉庫など、古くから仕舞われている鉄鉢を、ご自宅やご実家のお片付けで発見されご売却をお考えの際には、ぜひ、いわの美術にご一報くださいませ。
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