写真のお品物は、以前いわの美術でお買取りいたしました、ユニバーサル・ジュネーブの腕時計「ギルト・シャドウ」です。
1960年代から70年代にかけて機械式腕時計の全盛期に作られたモデルは、洗練されたシンプルなデザインと、ごく薄く完成度の高い機械が今日でも大きな魅力となっています。
古くから時計産業の盛んなスイスの老舗の一つ、ユニバーサル・ジュネーブは、1894年にフランスと国境を接する都市ル・ロックルで前身となる時計メーカー・ユニバーサル社が創設されたことに始まります。
時計技師のエミーユ・デコームとジョルジュ・ペレの二人が創業し、懐中時計が主役であった時代に複雑時計を得意分野として知名度を上げていき、1898年には30分積算計を備えたクロノグラフ「ユニバーサル・ウォッチ・エクストラ」を発売しました。
1917年にはユニバーサル・ウォッチ・エクストラをベースとした初の腕時計のクロノグラフを発売し、高品質で精緻な作りとエレガントなデザインで評判を高めます。
翌1918年工場をジュネーブに移転、1934年には本社も同じくジュネーブに移すとクロノグラフの名作として知られる「コンパックス」を発表し、この名作をベースに後年「アエロ・コンパックス」「トリ・コンパックス」シリーズを発売し、クロノグラフの名門ブランドとして地位を確立しました。
そして1937年に社名を現在のユニバーサル・ジュネーブに変更します。
腕時計の需要が増し、より正確で高度な技術が求められるようになった20世紀の二つの大戦の時期にユニバーサル・ジュネーブも革新を続け、1942年にはパイロット用に考案した時刻メモ用の文字盤を制作、メメントダイヤルで特許を取得します。
その後、1950年代から60年代までの機械式腕時計の全盛期には、小型ローターによる名作自動巻キャリバー「マイクローター」を1955年に発表、これは1966年に当時世界最薄であった自動巻時計「マイクローターUG66」にも生かされ、発売後には黄金時代を迎えます。
1970年代に入るとクォーツ時計に主流が移り、多くの老舗時計メーカーが時代に翻弄され苦境に立たされますが、1975年またしても当時世界最薄のクォーツキャリバーのキャリバー74を発表し新風を吹き込みました。
1980年代から90年代にかけては販路の世界拡大をはかり、中東やアジアなどにも販売網を伸ばし、2004年からブランドを本格的にリニューアルし、歴史的名作となった「コンパックス」をオマージュした「アエロ・トリ・コンパックス」を限定発売します。
続いて2005年からメンズシリーズの「オケアノス」、レディースシリーズの「アンテア」をリリースし、いずれも好調でしたが、この頃クォーツショック以来ムーブメントを採用していたETA社が段階的に供給停止を発表、ユニバーサル・ジュネーブは再びムーブメントを自社生産するマニュファクチュールの体制を取り戻す必要に駆られます。
度重なる時計業界の荒波にさらされながらも、「マイクローター」を搭載した「マイクローターUG101」を発売すると世界の時計ファンに支持され、現在も特別なブランドとして広く認識されています。
写真のお品物は、ユニバーサル・ジュネーブが機械式腕時計の最盛期であった1960年代に発表したホワイト・シャドウ シリーズの後継、ギルト・シャドウのモデルです。
シャドウ・シリーズはホワイト・シャドウが真白い文字盤のステンレス製、ゴールド・シャドウが金無垢、ギルト・シャドウは金張りとなっており、いずれも当時最薄のスタイリッシュさとシンプルなデザインが魅力的なモデルで、40年を経た今日でも人気に納得がいく逸品となっています。
シャドウ・シリーズ最初のホワイト・シャドウをデザインしたのは、数々の宝飾時計ブランドで名作を産み出したジェラルド・ジェンタでした。
時計界のピカソと謳われ、フリーランスで多数の有名ブランドのアイコン・ウォッチを産み出し、代表作にはパテックフィリップのノーチラスやオメガのコンステレーション、オーデマピゲのロイヤルオークなどが挙げられます。
また、デザイン面だけでなく、シャドウ・シリーズを生産していたころのユニバーサル・ジュネーブはムーブメントの自動巻き機械部品をすべて自社生産しており、機械としての完成度も素晴らしく、多方面から見ても機械式腕時計の全盛期の名作と言えるでしょう。
いわの美術では美術品・骨董品を中心に幅広い品目をお取り扱いしており、高級腕時計・機械式腕時計も多数のブランドのお買取り実績がございます。
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