写真のお品物は、カール・ハンセン&サン社のYチェア(CH24)のビンテージ品です。
北欧デンマークインテリア界の巨匠ハンス・ヨルゲセン・ウェグナーのデザインにより1950年に初めて制作されたYチェアは、ミニマムで美しいフォルムと機能性の高さで長く愛用され、現在も人気の高い稀有な名作といえます。
カール・ハンセン&サン社は1908年に家具職人のカール・ハンセンが設立しました。1920年代後半からデザイナーと共同で商品開発をはじめ、ハンス.J.ウェグナーとも1949年からパートナーシップを結び数々の名作を発表してきました。
デザイナーのハンス.J.ウェグナーは、デンマークモダンデザイン界の先駆者であるコーア・クリントの指導を受け、その機能と美を重んじる哲学を受け継いでいます。
1914年に靴職人の父のもと、ドイツ国境に近いトゥナーに生まれたハンス.J.ウェグナーは家具職人へ弟子入りし17歳で指物師の資格を取得します。
工房でデザインも経験したのち20歳でコペンハーゲンへ移り、1936年から38年にかけて工芸スクールで学びデザイナーとして活動を開始しました。
1940年から43年にかけてはアルネ・ヤコブセンのデザイン事務所に所属したのち独立します。1943年に最初に手掛けたチャイナ・チェアはYチェアの前身であり、中国明時代の椅子の笠木が曲木と指物のみで作られていることに感銘を受けたことに始まります。
チャイナ・チェアは師コーア・クリントにも通じる人間工学的発想で、座るときに背筋腹筋をリラックスできる背板がありながら、シンプルで美しいデザインを両立した画期的な椅子となりフリッツハンセン社から発売されました。
1940年代後半のデンマーク含む北欧諸国は産業振興策を強め、第二次世界大戦後の好況にあるアメリカはデンマーク家具にとって重要な輸出市場となりました。
北欧諸国は都市化や工業化について他のヨーロッパ諸国に後れをとり、大戦中は疲弊する経済と慢性的な材料不足に見舞われました。
その中で若い有望なデザイナーたちは、自国で伝統的に使われてきたオークや樺、リネンを素材に、近代的なデザインを古くからの技術を用いて生み出していき、これが北欧デザインのベースとして魅力に繋がることとなります。
戦後には普遍的なインダストリアルデザインに、心地よい暮らしのためのクラフトマンシップが根底に流れる北欧デザインの独自の様式は、世界中で人気を博し知られていきます。
ハンス.J.ウェグナーのチャイナチェアもこの頃に改良を重ねます。1949年にカールハンセン社から食卓椅子の注文を受けると、一般市民のための実用家具をモットーとしていたハンス.J.ウェグナーは数脚揃えるには価格を抑える必要があるとしました。
そこで背板をY字状に変更することで工程を少なくし、同時にデザインのミニマムさを追求したYチェアが完成します。
1950年に生産を開始してから今日まで70年近く、実用家具として多くの人々の家庭で愛用される名作中の名作となりました。
Yチェアは現行品のピカピカの新品ではない、味わい深い色味と質感をもったビンテージ品にもファンが多く、中古市場では年数の異なるビンテージ品が多数流通しています。
カールハンセン&サン社は現在まで通じてデンマーク国内製を貫き、徹底して品質を保つ生産体制も、耐久性への信頼に繋がっておりビンテージYチェアの人気の一端でもあります。
写真のお品物のフレームはオーク材が使われ、経年で美しい飴色となっています。座面のペーパーコードも色の変化はあるものの伸びや汚れ等のダメージは少なく、高評価となりました。
いわの美術では骨董品・美術品を中心に、家具や食器など幅広くお買取りを行っております。北欧家具は日本のコンパクトな住環境にも合うものが多く、拘りのビンテージ品は中古市場で人気のお品となっています。
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