茶道を嗜む際、ほろ苦い抹茶に甘い和菓子はつきものです。菓子には饅頭やようかん、団子といった主菓子と落雁や有平糖、煎餅などの干菓子に分かれ、それぞれ盛る器が異なることをご存じでしょうか。それぞれの菓子器は形状が異なり、はっきりとした特徴があります。
今回は主菓子器と干菓子器、どちらにも共通して用いる茶道具に分けて、名称や種類、使い方をご紹介します。
饅頭やようかん、団子などの主菓子(生菓子)を入れる器です。主な主菓子器として「菓子椀」「菓子鉢」「縁高」「食籠」の4つがあります。
正式な茶会で主菓子を盛る際に用いられる菓子器です。主に縁金や朱塗りのものが多く、吸い物椀と比較してやや背の低い器です。蓋つきの器で、楊枝や黒文字を客数分添えて用意します。
主菓子を盛るための、陶磁製の器です。唐物と和物があり、朱や金をあしらった華やかな絵が描かれているものが多く見られます。
唐物では天竜寺青磁や七官青磁の端反鉢、輪花鉢、平鉢などがあり優美な印象を受けます。和物は透鉢を代表に、雪笹や雲錦鉢の手鉢などもあります。菓子は客の人数分盛り、取り分け用の黒文字箸を1膳用意します。
濃茶の際に用いる主菓子器です。重箱の形をしており、塗り物であることが一般です。五重(5人分)で用意することが正式で、その際は1段に1つずつ主菓子を盛ります。
しかし、客数が6人以上の場合は最上段に2つと菓子の数を増やし、それ以上の場合は最上段から順に菓子の数を増やしていきます。ただし、どのような場合も最下段は必ず菓子の数を1つにしましょう。蓋の上に人数分の黒文字を置き、正客から回します。
菓子鉢や縁高同様に饅頭など蒸した主菓子を客の人数分だけ盛るために使用します。菓子鉢や縁高との大きな違いは蓋がついている点で、末客が最後に蓋を裏に返す必要があります。
円形や角形の食籠が一般的で、一段のものから重箱のように数段に分かれたものもあります。素材は漆器や陶磁器ですが、裏千家よりも表千家が好んで用いるようです。
水分の少ない乾燥した和菓子(干菓子)を入れるときに使用する器です。代表的な菓子器には「高坏」「振出」があります。
皿や器に足のついた、背の高い器です。漆器に蒔絵の描かれたものから無地のものまで幅広く存在し、古くから伝わる器です。一般的に用いられる高坏は足の高さが5寸(15.2cm)以下のものです。
金平糖や霰、甘納豆などの小粒の菓子を入れるための菓子器です。小型でひょうたん型のものが一般的です。口には菅で作られた栓があります。使用するときに振って菓子を出すことから「振出」の名がついています。
まず右手で振出を取って左手に持ち変え、次に菅の蓋を取り、一度懐紙の右上に置いてから両手で容器を回すようにして使います。
主菓子器や干菓子器の他、「黒文字」「銘々皿」も和菓子をふるまう際に欠かせません。
黒文字という名の木を削って作られた、楊枝の役割をするものです。客が主菓子を食べる際に用いられます。用途によって長さが変わることが特徴の1つです。また、菓子鉢や縁高に添えられる箸も黒文字の箸が一般的です。
銘々皿は、縁高を略した小皿ですが、菓子鉢や縁高とは異なり客に対してひとりずつに分けて菓子を出すために用います。
陶磁器や漆器、南鐐や砂張など数多くの種類があるため、場面や好みで使い分けましょう。銘々皿は、客それぞれに同じ形のものを用い、楊枝か黒文字を1本ずつ添えて出します。
それぞれの菓子器が持つ特徴についてご紹介しました。菓子を出す場面や点前の種類によって、使用すべき菓子器は異なります。器の素材や質感には作者のこだわりが表れ、茶の場の雰囲気に深みを出します。
菓子器を選ばれる方はぜひ、使用される場面や客の様子を頭に浮かべて選びましょう。
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