高級時計ブランド・ダニエル ロート(DANIEL ROTH)は、“アブラアン-ルイ・ブレゲの再来”と称されたフランスの伝説の独立時計師ダニエル・ロート(1945年生まれ)により1989年に設立されました。
ダニエル・ロートは、時計学校を卒業後、ジャガー・クルト(JAEGER-LECOULTRE)に在籍して時計師としての第一歩を踏み出しました。
その後、オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)で超薄型ムーブメントの開発を手掛けたのをきっかけに、時計師としての力量が世界中に広まりました。
さらに、ダニエル・ロートはパリのヴァンドーム広場に集まる5大宝石店のひとつにあげられる高級ジュエラー・ショーメ(CHAUMET)によるブレゲ再興にも携わりました。
ダニエル・ロートは、時計の歴史を200年早めたともいわれるスイスの時計職人アブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)が発明したトゥールビヨンなど、現存するブレゲ作の懐中時計の分解に着手して構造を解明し、それを腕時計サイズに設計し直すことで、現代に蘇らせることにも成功しました。こうした意味で、現在のブレゲの礎が、ダニエル・ロートによって築かれたともいうこともできるでしょう。
※トゥールビヨン(tourbillon):フランス語で”渦巻”を意味し、機械式時計に搭載される特殊機構の一つ。時計が重力の影響を受け、テンプにまでその影響が及ぶと振動に誤差が生じるが、こうした時計の重力や姿勢差を解消するために発明された特殊な脱進器(エスケープメント)のこと。
天才時計師と称されたダニエル・ロートは、約14年間の歳月を掛けて再興したブレゲに別れを告げ、自らの名前を冠したオリジナル・ブランドを1989年に立ち上げました。
同年、ブレゲではトゥールビヨンを発表しましたが、ダニエル・ロート(DANIEL ROTH)のプライベートブランドとして最初に発表した時計も、ケースバックにカレンダーとパワーリザーブを持つ両面式トゥールビヨンでした。
このモデルのケースの形状こそが、現在もダニエルロート(DANIEL ROTH)のトレードマークである円の両サイドをカットしたような独自のデザイン”ダブルオーバルケース”でした。この独自形状”ダブルオーバルケース”も評判となり、ダニエル・ロートが独立独歩の道を歩み出すきっかけとなりました。
その後、ダニエル・ロートは長らく独立時計師として活動してきましたが、彼が時計師としてよりも、経営者として振る舞わざるをえなくなり、時計作りをやめてしまいました。2000年末には、ダニエル ロート(DANIEL ROTH)ブランドはブルガリのグループ傘下に収まります。
ブルガリグループの傘下になった新生ダニエル・ロートは、べゼルにダイアモンドをセッティングした豪華なマスターズコレクション「パーペチュアル・カレンダー」を放つなど、現在は大資本をバックにしながら、ますます独自性を高めた作品を意欲的に発表しつづけています。