浮世絵師歌川国芳の連作『艶姿十六女仙』のうちの『呂洞賓』です。
美人が膝をついた瞬間に後ろにある襖絵と重なり、手元の漆皿から龍が飛び出しているように錯覚します。
その様子は右上のコマ絵でタイトルにもなっている中国の八仙の一人・呂洞賓(りょどうひん)の図とかぶり、対比が楽しい浮世絵です。
歌川国芳は現代でも非常に人気の浮世絵師です。
ガシャ髑髏(がしゃどくろ) が登場する『相馬の古内裏』は見たことがある人も多いのではないでしょうか。
ユニクロなどコラボ製品は数知れず、最近ではナイキからガシャ髑髏をプリントした靴モアアップテンポが発売されています。
この作品に見られるように、大胆で迫力のある構図で他の浮世絵師とは一線を画した幕末の花形絵師です。
歌川国芳は生まれも育ちも江戸の日本橋、火事と聞きつけると一目散に駆けつけて消火するような、短気でおっちゃこちょい、人を楽しませ自分も楽しむような親しみやすいキャラとなります。
早口かつ極端な巻き舌のべらんめえ口調で、自分のことは「わっち」、相手のことは「めえ」と呼ぶ、ちゃきちゃきの江戸っ子でした。
15歳で歌川派の豊国の門に入り、しばらくは不遇の時代を過ごします。
浮世絵の中でも人気が高かった役者絵にチャレンジするも、兄弟子のライバル歌川国貞の一人勝ち状態を崩せません。
転機は31歳の時に描いた『通俗水滸伝豪傑百八人之一個』です。
当時の水滸伝ブームに乗っかった作品でしたが、それまでの形式ばった『武者絵』というジャンルの常識を覆す、力強いポーズと躍動感に満ちた構図が評判となり大ヒット、話が複雑で登場人物の多い水滸伝から75人もの登場人物を描き分け千差万別に表現しました。
歌川国芳の評判と共に、それまで不人気であった浮世絵の『武者絵』という分野もメジャーとなります。
歌川国芳は人気絵師となってもそれに慢心することなく、いつも新しい構図やテーマを探求していました。
そこで生まれた1つが大判3枚続きの武者絵です。
現代のワイドスクリーンのような大迫力で、観る人の視覚の驚きを誘いました。
戯画とは風刺画、落書き、面白い絵などを含むジャンルであり、奇想天外な発想ができる歌川国芳の得意分野でした。
歌川国芳が45歳の時、天保の改革(贅沢禁止令)により春画、役者絵や美人画さえ禁止となります。
それにより浮世絵師は理不尽に仕事の大部分を失い、あらゆる娯楽を禁止された庶民のストレスも相当でしたが逆らえません。
表立って幕府批判などできない時代に、歌川国芳は風刺画で幕府を揶揄してからかい続け、何度も取り調べや罰金などを受けました。
恐らく性格的に正義感というより からかいたかっただけでしたが、結果的には自身のリスクを承知で庶民の気持ちを代弁する形となり、歌川国芳の人気はうなぎ登りとなります。
また禁止された役者絵は猫顔で描いてみたり、亀の顔が役者であったり、落書き風に描いたり、困難な状況でもひたすら明るく人々を楽しませました。
この倹約令は4年続き、その間他の浮世絵師も規制をかいくぐる作品を残しており、歌川国芳を中心に風刺画などの戯画が非常に盛り上がった時代となりました。
歌川国芳はこの天保の改革の時期以外にも多くの動物の絵を残しており、それ等も戯画のジャンルに入ります。
動物が擬人化され、猫、金魚、タコ、雀、たぬき等による人間臭い仕草が絶妙に可愛いです。
特に評価が高いのは猫で、常に猫を5~6匹飼っており、描く時も懐に猫を抱えていたという程の大の猫好きだからこその画力かもしれません。
歌川国芳は、作品の出来・不出来の差が激しい浮世絵師です。
気分にムラが多く、あまり気乗りしないやっつけ仕事のような作品がある一方、唯一無二のアートの極みのような作品もあります。
また59歳から中風(脳卒中の後遺症)に苦しみその頃から画力が落ち、さらに晩年の作品は弟子による代筆も否定できません。
没後間もなく明治となり美術界も欧米化が流行、同時期に活躍した歌川国貞・歌川広重と共に評価を著しく下げました。
昭和になって徐々に人気は回復し2000年頃から人気が急上昇、首位の葛飾北斎に次ぐ2番人気となっています。
長年敵対視していた絶対王者の歌川国貞には、現役時代は勝てませんでしたが近代では逆転し大きく引き離しました。
現代人から見て古いどころか新しいと感じてしまう歌川国芳、評価が高い今が売り時かもしれません。
いわの美術では歌川国芳の作品を買取強化中です。
浮世絵は光・温度・湿度の管理が一般家庭では難しく、色あせが進行してしまいます。
当時は雑誌のような感覚で売られていたので、長期保存を想定して制作されていなかったことも原因ですが、ボストン美術館所有の浮世絵は当時のまま色鮮やかに保たれているそうです。
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