雅楽の代表的な楽器として有名な和琴(わごん)、箏(そう)ですが、構造的に実は別の楽器であることはあまり知られていません。ただし、買取の際に重視されるポイントはあまり変わりなく、伝統工芸品としての側面もあり、装飾などが値段を左右しています。リサイクル品でも高価に売買されるものも多いことが特徴です。
和琴と箏は、胴体に糸(弦)が張られ柱(じ)が使用されるという基本的な構造は同様ながら、細かい部分や歴史が異なります。
和琴は「やまとごと」とも呼ばれる6弦の楽器で、和琴を弾いている埴輪(はにわ)が古墳時代の土器から出土していることや、古事記の中にも記述されていることなどからも分かるように、古代日本からある楽器です。
一方で箏は、奈良時代に唐から伝えられた13弦の楽器で、その形は龍のシンボルだとされています。どちらも神事や祭祀に使用されていたことから宗教音楽の楽器という側面を持っていますが、のちに源氏物語の中で描かれるように、平安時代には貴族の教養としてたしなまれるようになりました。
和琴、箏のどちらも売買価格を決めるのは音色の良しあしになりますが、実際に演奏することができなくとも、特徴的な部分を見てある程度判断することは可能です。
和琴や箏は、胴体部分の木目が美しいものほど価値が高くなります。和琴、箏の胴体は桐材で作られており、国産、外国産のさまざまな桐が使用されていますが、もっとも木目が美しいとされているものが会津桐です。
胴体部分の中身は空洞になっており、裏返すと音穴と呼ばれる穴が空いていて、そこから内部構造を見ることができます。胴体内部の加工で、ダイヤモンド状の六角形模様が美しく彫られている麻型彫りのものが、もっとも価値が高くなります。次いで、ギザギザ模様が二重になっている子持ち綾杉彫り、シンプルなギザギザ模様になる綾杉彫りと続き、一本線の溝が彫られているだけのすだれ彫りと続きます。
胴体の裏側に貼り付けられている裏板の加工でも価値は変わります。真っすぐな板をそのまま貼り付けているものを並甲、板を斜めに加工してあるものをくり甲と呼び、くり甲の方が高い価格で売買されます。
猫足が付けられている、胴体の上側の横部分を竜舌と呼び、ここに蒔絵(まきえ)が施されているものは高級品と査定され、蒔絵の美しさ自体も価格に影響します。ただしこの蒔絵は古いものほど良いということではなく、無地の竜舌に後から蒔絵を施している場合もあります。
箏の場合は、柱が象牙製のものも高い買取価格となります。これは象牙自体が現在は貴重品となっているためで、基本的に柱は交換も可能な付属品、消耗品の扱いとなります。象牙は取り扱いが難しく、管理が雑な場合はひび割れ、変色などを起こしてしまいます。その場合は価値が大きく下がるため、丁寧に管理しましょう。
猫足は基本的に胴体と一対で作られるため、他の箏には使用できないものが多く、また売却する際に猫足が欠けている場合は大きく値段が下がります。猫足の素材も紅木材、紫檀材、花梨材などがあり、最高級品は紅木材に象牙の装飾が施されたものです。
和琴、箏の価格は、胴体の木目、胴体内側の文様、蒔絵の有無などの装飾、そして琴柱や猫足などの素材により決定されます。
いわゆる練習用である並甲・すだれ彫りのものは、価格が付かず買取不可となる場合もありますが、丁寧な飾りが施されたものは高い価格となる場合もあるため、まずは信用できる専門店で査定してもらいましょう。
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