景徳鎮 キリン ビアマグ

　景徳鎮の始まり～最盛期

景徳鎮の地域はかつて『昌南鎮』と呼ばれ、発掘された陶片や窯跡から漢時代には器が制作されていたと推定されます。

良質の土と燃料の松材が豊富な自然環境に加え、原料や製品を運搬する水運が盛んであったことから、磁器制作で栄え 磁器の都『磁都』とも呼ばれてきました。

その透き通るような白磁に魅了された北宋の景徳年間の皇帝が、磁器の底に『景徳年製』と記すことを命じ、ここから『景徳鎮』と呼ばれるようになったのです。

明初期には官窯となり潤沢な予算が当てられ、皇帝の権威に基づく高い要求と厳しい管理により究極の磁器が制作され、明～清の中期が景徳鎮の最盛期となります。

その価値は非常に高く宝石や金と同等の取引がされたとも言われ、対外貿易の主力品目となりヨーロッパの王侯貴族や日本の茶人などを虜にし、景徳鎮の磁器は世界を駆け巡りました。

そんな高級磁器の技術を各国は欲しがり真似をして、日本の有田・伊万里、マイセン、セーブル、ロイヤルコペンハーゲンなどの陶磁器が発展を遂げ、後にこれらの磁器メーカーは景徳鎮をしのぐ存在となります。

　景徳鎮の清後期～現代

官窯であった景徳鎮の成衰は中国王朝の命運と共にありました。

アヘン戦争敗北(1842年)により諸外国の製品にかかる税率が理不尽に低くなり、中国国内に外国製の磁器が大量に流入します。

その上、清政府は軍費の資金源として景徳鎮の磁器が関所を通過するごとに税を徴収し、商品は消費地では4～5割増しの値段となってしまい、外国製の磁器と同じ価格になっていました。

そしてキリスト教による反乱『太平天国の乱』の際に景徳鎮は太平軍に占領(1853～1864年)され、窯業が10年余り停止します。

反乱が制圧された翌年に治帝の婚礼用磁器を受注するも、以前のように良質の製品を大量に作ることができませんでした。

そこで度重なる対外戦争での敗北により技術力の違いを痛感した清政府は、景徳鎮での全ての作業を機械化し安価な製品を大量生産する改革を推し進めました。

そんな中で起こった辛亥革命により陶工は離散し資金力もなくなり、第二次世界大戦では日本軍の爆撃により何度も火災となり町を完全に破壊したそうです。

景徳鎮の再建は1949年、新中国の誕生と共に急速に発達し、日用品の大量生産に全力を注ぎ1955年には年間磁器製造高は過去最大をはるかに上回り、国内需要を満たし世界65カ国に市場を持つ巨大産業となりました。

一方で景徳鎮の質の高さの源と言える原材料の白粘土『カオリン』は、高嶺 (カオリン) 山から採れ名前の由来にもなっていたのですが、何百年と掘り尽くされた高嶺山は地盤が弱く落盤事故が絶えなかったことから1964年閉山に至ります。

1978年の改革開放により、それまで規制により大量生産品しか制作できなかった景徳鎮で再び高級品を作ることが可能となり、民間企業も進出しました。

現在の景徳鎮も人口の半数は窯業に携わり、中国唯一の窯業専門大学である景徳鎮陶瓷大学では1.5万人の学生があらゆる分野の技術と陶磁器を融合する研究を行っています。