会社訪問した際、玄関ロビーの壁に絵画が掛けてあり、思わず足を止めて眺めてしまった経験はないでしょうか。美術品や工芸品を置くだけで室内の雰囲気が変わるため、会社で購入したいと考える方も少なくありません。
ところで、美術品や工芸品は減価償却資産に含まれるのでしょうか。今回は減価償却の基礎知識から減価償却資産の判定ポイントについてご紹介します。
減価償却は、時間の経過とともに価値が減少する資産(減価償却資産)の取得価格を、取得時に一度に費用計上するのではなく、各年分の費用を毎年計上することを指します。
減価償却の基礎となっているのは、「減価償却資産の価値を会計に正しく反映させる」という考え方です。
例えば、会社が所有する車や大型機械などは高額です。その取得価格を一度に費用として計上したのでは、その年度だけ経費が大きくなり、企業の業績が正確に反映されているとは言えません。このような事態を避けるため、取得価格の一定額(定額法)もしくは率(定率法)で、毎年費用計上する方法が減価償却です。
美術品等(絵画などの美術品や工芸品)は減価償却資産に該当するのでしょうか。美術品等の取り扱いに関する通達改正に伴い、平成27年度に会計上の美術品等の取り扱いが変更されました。
平成26年度以前は、「美術関係の年鑑などに登録されている作者によって作られたもの」または「1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)以上のもの」は減価償却資産に該当しない(非減価償却資産)としていました。
しかし、「美術関係の年鑑などは複数存在し、掲載基準が異なる」「減価償却の判定基準として設定されている金額が低い」など、この基準が現状を反映していないとの声もあり、平成27年度に判定基準が変更されたのです。
新基準では、平成27年1月1日以後に取得した美術品等については、原則として取得価額が1点100万円未満の美術品等は減価償却資産、取得価額が1点100万円以上の美術品等は非減価償却資産として取り扱います。
ただし、取得価額が1点100万円未満であっても、「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」は非減価償却資産、取得価額が1点100万円以上であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は減価償却資産として取り扱います。
「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、具体的には、以下の3点をすべて満たす美術品等を指します。
1.不特定多数の人が利用する場所の装飾もしくは展示用に取得される
2.移設が困難で当該用途にのみ利用する
3.他の用途での利用を仮定した場合に、美術品等としての市場価値が見込まれない
上記3つの条件を当てはめることができない美術品等は、美術品等の実態を踏まえて判断します。
この通達改正は過去にさかのぼって資産区分の変更を行うものではありませんが、改正後に再判定を行い、美術品等が減価償却資産に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことが可能です。
ただし、再判定は平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(適用初年度)に行う必要があります。適用初年度に再判定を行わなかった場合は、減価償却を行うことはできません。
平成27年以降に取得した絵画などの美術品や工芸品は、原則として「1点100万円未満が減価償却資産、100万円以上が減価償却資産に該当しない」と覚えておきましょう。減価償却資産に該当するか否かの判断が難しいものは、専門の業者に相談してみることをおすすめします。
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