中国では古来より、書道具・文房具の要である硯(すずり)、墨、紙、筆を「文房四宝」と呼び大切にしてきました。文房四宝の中には希少な素材を用いた古美術品とされるものも多く、現在も高額で取引をされています。
また、文房具であるという性質から、使用済みのものであっても意外な高値が付くことも珍しくありません。文房四宝以外でも筆筒、水滴、硯箱、文箱などの書道具にも凝った意匠が施されているものがあり、やはり高値で取引されています。
今回は、そんな価値のある書道具についてご紹介します。
硯の価値は、主に素材とされている石の品質、石に彫り込まれた飾りの技巧などでその価値が決まります。高品質の石を産出する4つの地域で作られた端渓硯(たんけいけん)、澄泥硯(ちょうでいけん)、歙州硯(きゅうじゅうけん)、トウ河緑石硯(とうがろくせきけん)が、中国四大硯と呼ばれる硯です。
硯は墨をする際の使い心地などにも大きな影響を与えるため、その素材、どこで採れた石を使用しているかで価値が大きく変化します。また、玉(翡翠)、サンゴ、象牙、唐木(紫壇、花梨)なども珍重される材質です。
文房四宝のうち、硯は使用しても摩耗することが少なく、古いものほど骨董的価値が高くなります。未使用だと高く売れるというものでもなく、使い込んだ硯の方が意外なほどの高値が付くこともあります。
墨はススに膠(ニカワ)と香料を混ぜて練り固めたもので、素材の産地や実際にすった際の色、にじみ具合などで価値が決まります。また中国産のものを唐墨、日本産のものを和墨と呼びますが、水質や気候が異なるために色、にじみ具合などが大きく異なることも特徴です。
唐墨でも古いもの、特に明代に作られたものを古墨(こぼく)と呼びますが、偽物や模倣品が多く出回っています。墨は素材を練り合わせたあとに型に入れて乾燥させて製造しますが、古墨と同じ型を使用した模倣品や倣古墨(ほうこぼく)が多く作られたため、見た目が古びていたとしても、そう見えるように加工されたものもあるため注意しましょう。
紙は消耗品でありながらも、水墨画などに使用される画仙紙は、年代が経って古くなったものの方が墨のにじみが良くなるなど、古いものに高い価値が付く場合もあります。
本来は中国の限られた生産地で作られたものを画仙紙と呼んでいましたが、日本で書画が普及するにつれて書画専用の用紙を画仙紙と呼ぶようになりました。そのため、本来の意味の画仙紙を本画仙紙と呼ぶこともあり、現在でも、安徽省(あんきしょう)宣城市(せんじょうし)産の本画仙紙・紅星牌(こうせいはい)は、最高級品です。
また、束で購入することが前提の画仙紙ですが、束の封が切られ一部が使用されている状態であっても、ものによっては高値が付くこともあります。開封済みでも売れる可能性は十分にあるため、価値が気になれば専門家に確認してもらいましょう。
筆は、筆先を墨にひたすために毛先が痛みやすく、また劣化もしやすいことから、骨董品としての価値は毛の種類よりも筆管(ひっかん)部分にあります。筆管が竹、象牙、玉管などの珍しい素材で作られているものや、凝った意匠が施されているものが高価です。
中国製のものには非常に凝った作りの筆管があり、骨董品としての価値は高くなりますが、握りにくさ、重さなどから実用的ではありません。使いやすく実用的な筆は、毛の品質や筆管の軽さ、握りやすさなどが改良されているため、骨董品としては価値があまりないでしょう。
文房四宝ではありませんが、書とは関わりが深い道具に印章があり、素材によっては高く取引されます。よく使用される石に関していえば、石の産地で価値は大きく変わりますし、また翡翠、象牙などの希少価値のあるものを印材としているものは高価です。
他にも書に使用する道具は多く、凝った作りのもの、珍しい素材のものであれば、いずれも高く買い取られる可能性があります。お手持ちの書道具の価値を確認したい場合は、買取店の査定サービスを利用してみてはいかがでしょうか。
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