書道は漢字文化圏とその周辺で発達したアジア特有の芸術で、絵画とは趣を異にする魅力で千年以上続けられてきました。
書道で用いられる道具はそれぞれに伝統があり、主な道具のうち紙・硯・墨・筆は文房四宝と呼ばれます。
特に硯と墨は高い骨董的価値を持つものがあり、その他にも水差し・文鎮・筆置き・筆筒・硯箱 などがあり、技巧の凝らされた銘品が受け継がれて来ました。
硯は書道具の中で最も骨董的価値の高い品物が見つかりやすいつ品目です。
消耗品ではないため古い品・使用品でも質が保たれやすく、貴重な素材・凝った意匠のものは非常に高値となります。
日本産(和硯)と中国産(唐硯)があり、産地ごとの素材の違いで分類されるこれらは以下が特に有名となっています。
唐硯
唐硯の四カ所の名産地の物を総称して四大名硯と呼びます。
端渓硯(たんけいけん)―骨董市場で最も人気があり、多彩な紋様と墨を綺麗に摺れる粒子の細かさが特徴。広東省産。
歙州硯(きゅうじゅうけん)―硬質で美しい紋様、江西省産
澄泥硯(ちょうでいけん)―天然石と泥製で焼成されたものがあり、山西省産
洮河緑石硯(とうがりょくせきけん)―墨の発色が良い石質の古材で、新しいものは造られない。甘粛省産
和硯
赤間硯(あかますずり)―赤みを帯びた紫色・茶色、山形県宇部市産
雄勝硯(おがつすずり)―黒・暗い藍色で端渓硯に性質が似る、宮城県石巻市産
雨畑硯(あめはたすずり)―粒子の細かい石質で墨を磨りやすい、山梨県早川町産
土佐硯(とさすずり)―青黒く、金星と呼ばれる紋様もみられる。高知県幡多郡産
墨は新墨・古墨、日本産の和墨・中国産の唐墨で熟成度や成分が異なり、墨色や書き味が異なります。
中国から朝鮮を経て日本へ渡った書道は、初めは同じだったものが紙や書法など次第に変化していき、気候風土や水質の違いによって唐墨とは膠と煤の割合も変わり滲み・硬さ・伸び・墨色の異なる和墨が完成しました。
唐墨の古墨は高品質に熟成が重なり、とくに中華民国以前の品物は骨董的価値も高いものとなります。
日本の書道では一般に「半紙」で練習を積み、達者となった人は「画仙紙」を使います。
半紙は日本独自の寸法で作られ、伝統的には手漉き和紙で作られていました。
画仙紙は日本国内での呼称であり、画仙紙発祥の地である中国ではおもに書画紙と呼ばれます。
さらに日本産の画仙紙と中国産を区別するため中国産画仙紙を本画仙と呼ぶことがあり、狭義では最上級といわれる安徽省烏溪の宣紙、さらにその内トップメーカーの紅星牌製のものを指すことがあります。
本画仙紙は当初より高級な書道用紙でしたが、近年は価格が高騰しており、新古品や開封済みでも保存状態のよい本画仙紙は中古市場で高い需要が継続しています。
筆は墨と紙に接し毛先が傷んでいく消耗品ですが、筆の持ち手となる筆菅に骨董的価値が見いだされます。
特に中国の古い筆には凝った作りの筆管があり、堆朱や象牙彫刻など中古市場で高値となるものも見られ、これらは実用的な書きやすい筆とは異なり鑑玩に価値が置かれています。
硯屏
硯屏(けんびょう)の本来の役割は、硯中の墨を風による乾燥や塵ほこりから守る為に硯の前に立てることですが、机上を飾る役割もあり装飾的な品物が多数あります。
印材・篆刻
書道とかかわりが深く、骨董として人気のある品物に印材があります。
書の左下に推す姓名や雅号の落款印、右上の印首印や右下の遊び印などを彫ることを篆刻といい、書道と並んで人気の高い分野です。
印材には銘石や翡翠など貴重な素材もあり、人気が高く高値となりやすいのは中国福建省産の寿山石のうち田黄、芙蓉、浙江省の青田石、昌化石とその内の鶏血石などが挙げられます。
また素材だけでなく印材上部の飾り彫り(作紐、さくちゅう)が凝ったものも高値買取りの可能性があります。
水差し、文鎮、筆筒、筆置きなど
書道は多くの道具が用いられ、文人に長く愛されながら美術工芸の技巧を凝らした品が数多く生み出されました。
文房四宝や印材など以外にも、美術的価値の高い書道具は高価買取となる場合があります。
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