世界には数多くのパイプメーカー・パイプブランドがありますが、紳士の国イギリスのパイプの魅力は、ブライヤーを素材としたパイプを発展させ、英国人がつくりあげたクラシック・シェイプにみられます。
19世紀後半に英国がスーツというものをつくり、それにシャツとタイをあわせる紳士なスタイルが、世界の男性のスタンダードな装いとなりましたが、その英国紳士スタイルの一部として発展したイギリス・パイプは、21世紀となった現在でも、パイプ愛好家の間で根強い人気を持ち続けています。
1863年に、ロシア移民フレデリック・チャラタンによって創設されたメーカーで、現存する最も古いイギリスのパイプメーカーとして、現在も創業当時から変わらぬ独自の製法でパイプづくりを行っています。
チャラタンは、当時最も早く、スタンメル(成型済みボウル)をフランスからの輸入に頼らずロンドンの工場で削り出しを行なった、ロンドンにおけるブライヤーパイプのパイオニアとして知られます。
また、チャラタンではデンマークでフリーハンドが始まる以前からフリーハンドを手掛けています。チャラタンのパイプ職人たちは、その卓越した技により、サンディングディスクのみでブライヤーの削り出しを行なうフリーハンド・ターニングの創出を可能とし、この技法は現在もフリーハンドパイプ製作術の基本となっています。
チャラタンのパイプの特徴のひとつとしては、ダブル・コンフォートと呼ばれる二重のサドル・マウスピースがあげられます。チャラタンの吸い口には、世界で一番良質なドイツ製のエボナイトが使われています。
チャラタンでは、職人がエボナイトの丸棒から一点ずつ削り出し、パイプに合わせて吸い口がつくり上げられますが、この吸い口が、通常と違う二段のサドル(段付)になっており、この二重のサドル・マウスピースが、パイプが視覚的にも軽く、またシャープにみせています。
また”大きくても軽いブライヤー”という点も、チャラタンのもう一つの特徴です。チャラタンでは、使用する最上級のプラトゥ材の水分を取り除くため、オイルキュアードと呼ばれる手法を用いています。オイルキュアードは、ブライヤー原材料の中に残っている樹液を最大限取り除くことで、木地が締まり、ブライヤーの軽量化が図られます。
”Perfection in Pipes"をモットーとするチャラタンのハイグレードパイプであるフリーハンドパイプは、目の覚めるようなストレートグレインと豪快で自由なフリーハンドシェイプを備えており、当時、紳士用品のブランドとして名を馳せたダンヒル Dunhillですら及びもつかないほどの高価な価格で販売されていたといいます。
チャラタンは、1962年、後継者の不在から売却され、現在は、ダンヒルの傘下となっていますが、今も変わらず、ダンヒル傘下の第一ブランドとして伝統製法によるパイプの製作が続けています。